外国為替市場では、日本経済が本格的な物価上昇局面に入っていないとの見方が多い。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した7月の月次調査<外為>によると、持続的・安定的な物価上昇局面に入ったと思うかという設問で、「入ったとは思わない」との見立てが42%と最多となった。
もっとも、調査では持続的・安定的な物価上昇局面に「入ったと思う」との答えも37%あった。「分からない」は21%。意見が割れている面もある。
全国消費者物価指数(CPI)の生鮮食品を除く総合は、前年同月比の上昇率が5月まで9カ月連続で3%以上となっている。日銀の物価目標2%を上回る状況が続く。
それでも外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「持続的・安定的な物価上昇局面に入ったと確信に足るものがない」と指摘する。
日銀の植田和男総裁も6月16日の記者会見で物価目標達成には「なお時間がかかる」と述べていた。
日銀が27~28日の金融政策決定会合で現行の金融緩和政策を修正すると思うかとの問いに対し、「修正しない」との回答が73%を占めた。日銀や市場関係者が趨勢的な物価上昇に自信を持ちきれないことが影響しているようだ。
仮に修正する場合の手段について複数回答可で聞いたところ、「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を撤廃する」が45%で最多だった。7月会合で緩和を修正した場合の相場への影響に関しては、円安基調に「歯止めがかかる」との回答が70%だった。
政府・日銀が円買いの為替市場介入に踏み切る水準については「1ドル=150円台」が最多の40%だった。
6月末に1ドル=145円台まで下落した円の対ドル相場は、足元で一時137円台まで上昇した。外為どっとコム総研の神田氏は「米国は6月のCPI上昇率も減速し、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を最後に利上げが打ち止めになるとの見方が浮上してきた」と解説する。
一方の日本では7月上旬発表の賃金統計が上向いた。日銀が目指す「賃金上昇を伴う形での物価安定」が視野に入ればYCC修正も近づくとの思惑が市場で盛り返している。7月だけでなくそれ以降の日銀会合も注目だ。
調査は7月10~12日に実施、金融機関や事業会社の外為市場関係者77人が回答した。
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