【日経QUICKニュース(NQN)】金融情報会社のQUICKは19日午後、都内で月次調査セミナーを開いた。「展望・世界の金融政策 植田日銀、次の一手は」と題したパネルディスカッションで、コモンズ投信の伊井哲朗社長は日銀が27~28日に開く金融政策決定会合で「賃金の持続的上昇を重視するなら、金融緩和の縮小には簡単に踏み切れないだろう」と語った。ただ株式市場で金融セクターが買われているのを踏まえると、株式市場の関係者には7月修正を予想する人が多い、との見方を示した。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、次の日銀の一手として長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃を予想し、まだ緩和縮小に踏み切れる段階にはないとして「7月は現状維持だろう」と話した。また、YCCを仮に修正したとしても「金利の上昇が限定的なら円高は一時的」とも語った。
野村証券の小清水直和シニア金利ストラテジストは、日銀は次にYCCの対象年限を10年から5年、または2年に短期化すると予想。「YCC修正については7月も有力視しているが、撤廃には時間がかかるだろう」との見方を示した。緩和縮小に踏み切るには「物価の安定性を保ちつつ、金利の急激な変化を抑える柔軟な修正を予想する」と話した。
モデレーターは日本経済新聞社の小栗太編集委員が務めた。
■PwC片岡氏、日銀7月・10月会合での政策修正「可能性は非常に薄い」
基調講演した元日銀審議委員のPwCコンサルティング・チーフエコノミストの片岡剛士氏は、日銀が7月や10月の金融政策決定会合で金融政策を修正するとの観測を巡り「可能性としては非常に薄い」との考えを示した。
持続的・安定的な2%の物価目標を達成するには「あともう一息ではないのか」と述べ、達成のためには賃金上昇と所得拡大、購買力の上昇に伴う物価上昇が「両立して起こることが大事」との認識を示した。
日銀が2%の物価目標を達成した後の出口政策としては、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)をいきなり解除するのではなく、段階的に長期金利の許容変動幅を広げたりなどするのでは、との考えを示した。
■大和の木野内氏、日銀の緩和解除は1年後以降との見方
大和証券の常務理事チーフテクニカルアナリストの木野内栄治氏は、日銀の金融政策を巡り、金融緩和策の解除は1年後以降との見方を示した。日銀の植田和男総裁は日本経済の供給力と需要の差をあらわす「需給ギャップ」が上昇してくるのを待っているのではないかと指摘。景気がさらに良くなるまで金融緩和を続けるということで、長期的に見れば株式に対して「強気で考えるべきだとの結論が得られるかもしれない」と話した。