主要中央銀行の金融政策決定会合に市場関係者の注目が集まった。米連邦準備理事会(FRB)は26日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%引き上げ5.25~5.50%に決定。ゴールドマン・サックスは28日付のメモで、「リサーチ部門のエコノミストはFRBの7月0.25%利上げが引き締めサイクルの最後と予想、見通しが正しければ米株式市場にポジティブに影響する」とコメントした。
欧州中央銀行(ECB)がFRBに続いた。27日の理事会で0.25%利上げ。フィナンシャル・タイムズ紙は、金利上昇だけを示唆しつづけたECBのラガルド総裁とFRBのパウエル議長が、次回会合について「利上げと据え置きのいずれも可能性がある」とそれぞれスタンスを修正したと報じた。ECBとFRBの利上げサイクル終了が近いと市場関係者が受け取ったとしている。
FRBとECBの会合は市場の予想通りだったが、日銀は違った。「マーケットが日銀の決定にショックを受けた」。CNBCが28日の日銀金融政策決定会合をこう報じた。日銀は、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)で10年物国債利回りの上限を0.5%で据え置いたものの、市場動向に応じて0.5%を一定程度超えることを容認する方針を決めた。CNBCは、日銀のYCCは市場機能を低下させるとして効果に懐疑的な見方が一部あったと解説。欧米メディアは日銀の決定を異例に大きく報じた。
日本は世界の主要国で唯一マイナス金利を維持する国。フィナンシャル・タイムズ紙は、日本のインフレ率が40年ぶりの高水準を記録する中でも日銀はマイナス金利を据え置く一方でYCCを修正、緩和政策の巻き戻しなのか市場が混乱したと報じた。ブルームバーグ通信は、日銀のYCC柔軟化で、世界の債券利回りの最後の重石が外れたと解説した。債券相場上昇を見込んでいた投資家に衝撃が走ったとしている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は28日付社説で、日銀が市場の現実を受け入れたと伝えた。量的緩和政策で日銀は市場にある日本国債の50%以上を既に保有しており、政策が継続する限り真の市場がないと指摘、これが金融政策としてのYCCの弱点の1つになったとしている。日本を除く世界は景気悪化を最小限にとどめながら高金利に移行、世界の経済環境が穏やかなうちに日銀はYCCを撤廃すべきと主張した。
日銀の次回金融政策決定会合は9月21~22日。ECBは9月14日に理事会、FRBは9月19~20日に次回FOMCを予定している。転換点に近づいたとみられる日米欧の中銀政策は今後の幅広い市場の最大の材料の1つになるとの指摘は少なくない。株式市場や外国為替市場の方向を決める材料になると予想される。3中銀の次回会合前の8月24~26日に開かれる米ジャクソンホール会議への注目度が高まった。世界の主要中銀幹部が出席する。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。