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住居費高騰に変化の兆し、FRB政策に影響も LA発ニュースを読む

サンタモニカのサード・プロムナード。3ブロックにわたる約640メートルの両サイドにショップやカフェが連なるロサンゼルスで人気のショッピング街だが、土曜日午後の人出は少なかった。地元の若者や観光客でにぎわったパンデミック(疾病の世界的流行)前と別世界のよう。気になったのは空き店舗の多さ。数えてみると20店舗以上あった。知人の不動産ブローカーによると「テナント料が非常に高い」ことが一因らしい。ブローカーは、商業不動産も住宅も高くなりすぎたとこぼす。

カリフォルニア州不動産協会(CAR)が11日発表した第2四半期(4~6月)のレポートによると、一戸建て住宅価格の中央値は83万0620ドル(約1億2044万円)。頭金20%で30年物固定金利の住宅ローンを組むと、元本と金利を合わせた毎月の支払額は5200ドル(約75万4000円)になるとCARは指摘した。ブルームバーグ通信は、カリフォルニア州では、金利上昇と供給不足の影響でマイホームがますます遠い存在になったと伝えた。住宅費高騰で、地元経済への影響や人口流出が懸念されていると伝えた。

米労働省が10日発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.2%上昇。6月の3.0%から伸びが加速した。加速は13カ月ぶり。上昇分の約90%を占めたのはシェルター項目で、指数を押し上げた。シェルターが指数に占める割合は34.78%。内訳をみるとシェルターの7割強は帰属家賃だ。帰属家賃とは、持ち家を所有する人がその住宅を借家だと仮定した場合の想定家賃で、前年比7.7%上昇した。2割強を占める賃貸住宅家賃は8.0%上昇した。米CPIは、帰属家賃の算出につかう住居価格と賃貸住宅家賃が鍵を握るとみられる。

サンフランシスコ地区連銀が13日発表した調査分析が注目を集めた。CPIの重要項目シェルターの上昇率は2024年後半まで鈍化が続き、2024年半ばにマイナス圏に転じる可能性すらあると指摘した。米連邦準備理事会(FRB)が1%相当の引き締めを実施した場合、2年半の間に賃貸料のインフレ率を最大3.2%引き下げると分析した。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、サンフランシスコ地区連銀の分析に加え、信頼できる民間不動産情報のジローやS&P・ケース・シラー全米住宅価格指数などの統計から、住居費は大きく下落する可能性が高いと報じた。過熱が和らぎ、FRBは利上げ休止に傾くかもしれないとしている。7月CPIに特筆すべきことはなかったが、住居費の影響が大きかったことで、株式と債券の強気派にはいくぶん楽観的になれる材料が得られることができたと伝えた。

米労働省が11日発表した7月の卸売物価指数(PPI)は前月比、前年比ともに伸びが加速。いずれも市場予想を上回った。サービス価格が約1年ぶりの高い伸びを記録したことが影響した。米国債利回りは上昇、外国為替市場はドル高地合いとなった。ダウ工業株30種平均は上昇したものの、S&P500種株式指数とナスダック総合指数は下落した。投資情報誌バロンズは、最新のCPIとPPIを消化しながら取引したと伝えた。FRBが政策を決める次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は9月19~20日。FOMC前にCPIとPPIがもう1回発表される。

 

(このコラムは原則、毎週1回配信します)

福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。

著者名

松島 新


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