バイデン米大統領がワシントン近郊の山荘「キャンプデービッド」に岸田文雄首相と韓国の尹錫悦大統領を招いた18日の日米韓首脳会談。歴史的会談があったキャンプデービッドを舞台にした「特別感」もあり、米メディアは異例に大きく報じた。中国の影響力拡大に対抗した歴史的会談との視点が多かった。FOXニュースは、経済低迷から関心をそらすため、中国の習近平国家主席が軍事拡大を進める恐れがあるとの米軍関係者の見方を伝えた。
欧米メディアは中国経済の動向を連日トップ級で報じている。ウォール・ストリート・ジャーナルは20日、中国の40年にわたる経済ブームが終わったと伝えた。貧困から世界的経済大国に成長したものの、経済モデルが崩れたとしている。高齢化、米国および同盟国との分断の深刻化などを背景に中国は低成長時代に突入したと解説した。別の記事で、1400万ドル相当の金利と元本が未払いとなったシャドーバンキングの中融国際信託を取り上げ、危機が連鎖し「リーマン級」の事態に発展する恐れがあると警戒が強まったと報じた。
英フィナンシャル・タイムズ紙は、かつてアジアで最も裕福な女性だった中国の不動産最大手カントリー・ガーデン・ホールディングス(碧桂園控股)の楊恵妍会長を特集した。2021年時点の個人資産は約300億ドル(4兆3500億円)だったが、父親が30年前に起業した会社は破綻の危機に直面したとしている。生き残りに必死だが、民間企業の締め付けを強化する中国政府の動きは逆風だと伝えた。
経営再建中の中国の不動産開発大手チャイナ・エバーグランデ・グループ(中国恒大集団)は17日、ニューヨークの連邦破産裁判所に破産を申請した。資産の強制的な差し押さえを回避できる連邦破産法第15条の適用を申請したもので、債務再編を目指す意向。ニューヨーク・タイムズ紙は、未払金は2000億ドル(約29兆円)あり、負債は3350億ドル(約48兆5800億円)にのぼると大きく報じた。デフォルト(債務不履行)から2年後の破産申請が、中国の小規模開発業者のデフォルトに繋がる可能性があるとしている。
中国の景気悪化を示唆する経済指標の発表が相次いだ。工業生産高や小売売上高は予想割れ。若年層の失業率は20%前後で推移していたが、中国政府は若年層失業率の発表を一時停止すると発表した。香港の主要株式指数であるハンセン指数は18日の取引で2.1%下落、ベア相場入りした。1月の高値から20%超下落。米投資情報誌バロンズは、中国不動産セクターの危機に加え、中国経済の減速を示す経済統計で投資家の懸念が広がったと報じた。
CNBCは、米国の株式市場は金利上昇と中国への懸念が重なる「パーフェクト・ストーム」に直面したと報じた。カントリー・ガーデンの支払い停止とエバーグランデの破産申請が相次ぎ中国不動産市場への懸念が拡大したとしている。米連邦準備理事会(FRB)の政策をにらんだ金利動向とあわせ、中国情勢が米国市場を動かす材料になった。米商務省の統計によると、今年上半期(1~6月)の中国からの輸入額は2030億ドルと、前年同期比25%減。米国のモノの輸入先で中国はメキシコとカナダに抜かれ3位となったが、米国経済への影響と関心は依然大きい。
(このコラムは原則、毎週1回配信します)
福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。