外国為替市場で、米景気が底堅いとの見方が広がりつつある。QUICKと日経ヴェリタスが共同実施した9月の月次調査<外為>によると、2024年までに米国は景気後退局面に入るかとの問いに対し「入らない」との回答が43%を占めた。「23年内に入る」は5%どまりで、「24年に入る」は計52%だった。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストによると、今から1年ほど前の時点では23年中の景気後退入りが市場のメインシナリオだった。しかし米雇用や消費はその後、インフレや金利高、ドル高が続く中でも堅調さを保ってきた。「景気の底堅さを意識する人が増え、後退時期の予想も後にずれた」(唐鎌氏)という。
24年中の景気後退を見込む層の回答分布をみると1~6月(計40%)が多く、7~12月(計12%)は少なかった。目先は物価高止まりへの警戒感が残るが、それを乗り越えれば経済はソフトランディング(軟着陸)できるとの期待があるようだ。
米景気見通しを踏まえて米連邦準備理事会(FRB)がいつ利下げに転じるか聞いたところ、今年中との回答はなかった。「24年4~6月」が最多の31%で、「24年7~9月」が27%、「25年1月以降」が20%、「24年1~3月」が15%で続いた。
欧州最大の経済国ドイツについては、23年中または24年前半に景気後退に入るとの見方が計75%となった。欧州中央銀行(ECB)が利下げに踏み切る時期は「24年4~6月」と「同7~9月」が29%で並んだ。
不動産バブル崩壊が話題の中国について、23年の政府目標である5%前後の経済成長を実現できるか聞いたところ、約7割が「できない」と回答した。
中国の景気不安がさらに強まった場合の主要通貨への影響も尋ねた。最も強くなる通貨として回答者の8割近くが「米ドル」を挙げた。現状の米景気が強いうえ、中国経済との分断を進めているのも一因とみられる。半面、中国と経済的な結びつきが強い「オーストラリア(豪)ドル」と「ユーロ」は、最も弱くなる通貨の1、2位を占めた。
日本はデフレを脱却したと思うかとの設問では61%が「はい」と答え、回答者からは「インフレ率からみてデフレ脱却といえる」との声が出た。デフレ脱却期待に加え、植田和男日銀総裁の9日付のインタビュー記事もきっかけとなり、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは12日に0.72%と14年1月以来の高水準を付けた。
調査は11~13日に実施、金融機関や事業会社の外為市場関係者80人が回答した。
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