中央銀行の「利上げは終わり」との認識が広まると、金融市場は「ノー・ランディング、ノー景気後退シナリオ」に向けて動き出すように思われます。
なぜなら、「それがパターンだから」というのが本当の答えですが、具体的に挙げれば、
- 「利上げはもうない」という認識そのものが楽観をもたらすほか、
- 循環的に緩やかに減速する経済指標がむしろ景気拡大の持続性を想起させ、「景気後退を起こさずに乗り切った」という見方が広がり、
- さらには、「今回は違う」を思わせる大きなテーマがこうした楽観を強化していく
とみられるためです(→2000年は情報技術革命ブーム、2008年は新興国・中国ブーム、いまはAI・人工知能ブーム)。
しかし、上記3点ではそれぞれ、
- 金利が大幅に上がった事実は忘れられている!
- 利上げが実体経済や金融市場に悪影響を及ぼすには時間がかかることが忘れられている!
- 多くのケースで「今回は違う」は間違いだったことが忘れられている!
わけです。
そこで思い出しておきたいのが、ボブ・ファレルの『マーケットの10のルール』です。
ボブ・ファレル『マーケットの10のルール』
【次の3つの図】に示すとおり、金融市場には、かつて米メリルリンチのストラテジストとして活躍したレジェンド、ボブ・ファレル氏が提示した『マーケットの10のルール』があります。
みなさんもこれらのうちのいくつかを経験されていると想像します。
ここまでは【ルール4】→【7】→【9&3】と来ている。
ここまでの相場もパターンどおりで、『マーケットの10のルール』の多くの項目をなぞっているようにみえます。
まずは、【ルール4】の「指数的な上昇や下落をみせるマーケットは、思ったよりも長続きする。しかし、それが「横ばい」で終わることはない」が挙げられます。この前者に沿うように、米国大型成長株式の上昇や反発が続いてきました。
そして、今年これまでの上昇は(アップルやアマゾンなど)『マグニフィセント7』と呼ばれる時価総額上位7企業に偏っています。すなわち、【ルール7】の「マーケットは、全体が上がるときが最も強固であり、一部しか上がらなくなったときが最も脆弱である」の「脆弱な状態」が生じているようにみえます(→過去数年において、大型テクノロジー企業は何度か似た状況を迎えましたが、そのたび前記の【ルール4】に従うかのように切り抜けてきました)。
また、現在は「AI・人工知能のブーム」が生じています。すなわち、【ルール9】の「マーケットの専門家が異口同音に同じことを言い出すときは、別のことが生じるときである」や【ルール3】の「マーケットに「今回は違う」はない。行き過ぎや過剰は永続しない」を考慮すると、たとえ「AIが世の中を変える」としてもその経済的な影響が過剰に膨らんで予測されている恐れにも警戒しなければなりません。
次は【2】に向かうように思える。
今後は、【ルール2】の「一方向への行き過ぎや過剰は、逆方向への行き過ぎや過剰を生む」ように思えます。
大事なことは、「マーケットは常に、ちょうどよいところ≒フェア・バリューで止まることはなく、行き過ぎるところまで行ってしまう」ということです。
過去は利上げが止まると、やがて景気後退に向かっているわけですから、本来ならば、「利上げ終了は要注意のサイン」のはずです。
しかし、少なくない数のマーケット参加者が「景気後退への警戒」を解いていないうちは、景気後退は来ないのがパターンです。
なかなか景気後退が来ず、ひとりまたひとりと景気後退の見通しを取り下げ、最後まで弱気だった人がその見通しを取り下げる頃がマーケットはピークです。その頃は「全員ロングorショート解消」ですから、金融市場では「熱狂」が生じています。
「いまがすでに熱狂か」と問えば、まだそんなふうには見えません。たとえば、利下げ織り込みは健在です。
しかし、グーグルで少しずつ「景気後退」の検索が減り、「ソフト・ランディング」の検索が増えていますから、マーケットは徐々に楽観へと向かっています。
【ルール2】の「一方向への行き過ぎや過剰は、逆方向への行き過ぎや過剰を生む」に戻ると、まずは、景気や株式市場に「熱狂」という行き過ぎや過剰が生じ、その後に反対方向への行き過ぎや過剰である「景気後退」が生じる可能性があると思われます。
「ノー・ランディング、ノー景気後退シナリオ」でできること
仮に、次が「ノー・ランディング、ノー景気後退シナリオ」ならば、できることは「強気相場に乗りながらも半身の姿勢を取って警戒を怠らない」か、「上昇著しい市場で一部の利食いをし、割安にみえる/これまで見放されてきた市場に資金を分散させる」ことが一案でしょう。
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