【QUICK Money World 辰巳 華世】資産運用をする人が必ず知っておくべきことの一つに税金があります。上手に資産運用するには税金について知っておくことが大切です。資産運用の方法はいろいろありますが、今回は国内株式、投資信託、債券投資にまつわる税金について解説します。税金のお得な制度の少額投資非課税制度(NISA)や私的年金である個人型確定拠出年金( iDeCo 、イデコ)も紹介します。
■「株式投資と税金」「金融商品と税金」
株式投資など資産運用をするうえで知っておかないといけない知識の一つに税金があります。基本的に資産運用で利益を得た場合は、税金がかかります。
例えば株式投資で10万円の利益をあげた場合、10万円がまるまる手元に入ってくると思ってはいけません。利益に対して20.315%の税金がかかり、実質的に手に入ってくる金額は約8万円程度になります。
さて、株式投資には利益に20.315%の税金がかかりますが、納税方法を選ぶことができます。証券口座には、「特定口座」と「一般口座」があります。特定口座には、源泉徴収「有り」と「なし」があり、源泉徴収「有り」を選択すれば自分で税金を申告しなくても、自動的に計算してくれ納税までしてくれます。
一方で、特定口座で源泉徴収「なし」や、一般口座を選択した場合は、自分で確定申告をする必要があります。自分で確定申告するのが大変だと思えば、特定口座の源泉徴収有りを選択すれば、納税の心配をする必要はありません。
■「株式・投資信託・債券の取引にかかる税金」
資産運用にかかる税金の仕組みは、運用する方法や金融商品によって多少異なります。ここからは、国内株式、投資信託、債券投資をした場合の税金について紹介します。
◯株式投資と税金
株式投資で得られる利益には2種類あります。一つは、キャピタルゲインと呼ばれる売却益、もう一つはインカムゲインと呼ばれる受取配当金です。
一般的な株式投資では、キャピタルゲイン・インカムゲインともに税金がかかります。
税率は20.315%です。基本的には所得税15%、住民税5%の合わせて20%ですが、2037年12月末までは、これに復興特別所得税が加わり、
合計20.315%となっています。
上記で説明したように、証券口座には一般口座と特定口座の2種類あり、特定口座の源泉徴収有りの口座を選択すれば自動的に税金が計算され納税までしてくれます。
配当金とは別に株主優待を実施している企業があります。例えば、株主優待でクオカードなど1000円を受け取った場合。源泉徴収有りでも源泉徴収されるわけではなく1000円のカードが手元に届きます。1000円届いたから、税金がかからないのかと言うとそういう訳ではなく、株主優待も実は、課税対象です。
配当金と金銭的価値として受け取る株主優待は、所得の種類が異なります。配当金は「配当所得」ですが、株主優待は「雑所得」として申告する必要があります。ただ、所得税のルールで、確定申告をしてなく給与所得のみの場合、雑所得など他の所得が20万円以内であれば確定申告が不要という
「20万円ルール」があります。なので、株主優待を受け取っても確定申告をしなくても良いケースに該当する人も多いと思います。
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◯投資信託と税金
投資信託で得られる利益には、「分配金」と途中で売却して得られる「譲渡益」があります。時期が来ると償還する投資信託もあり「償還時の利益(償還利益)」もあります。投資信託の場合も、分配金であれ、譲渡益であれ、利益が出たら税金がかかります。税率は20.315%です。
ただ、分配金の場合、税金がかからない分配金もあります。投資信託の分配金には、普通分配金と特別分配金という2種類があります。普通分配金は、運用で得た利益を投資家に分配するものです。一方、特別分配金とは、元本の一部を払い戻す形で分配金として出す分配金です。自分が投資した元本の一部を返金する形なので、自分の足を食べるタコをイメージさせ「タコ足配当」とも呼ばれています。
普通分配金には税金がかかりますが、特別分配金は自分の元本の一部を取り崩して受領しているだけなので税金はかかりません。
投資信託には、株式投資信託と公社債投資信託の2種類があります。
株式投資信託の普通分配金は「配当所得」、売却などによる譲渡益は、「上場株式等の譲渡所得等」として課税され、公社債投資信託の分配金は「利子所得」、償還利益は「上場株式等の譲渡所得等」として課税されます。いずれの投資信託でも利益が出たら、利益に対して税率20.315%がかかります。
(投資信託の税金取り扱いと税率)
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(普通)分配金 | 譲渡益 | 税率 |
株式投資信託 | 配当所得 | 上場株式等の 譲渡所得等 |
20.315% |
公社債投資信託 | 利子所得 | 上場株式等の 譲渡所得等 |
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◯債券投資と税金
債券投資では、利子や、債券を売却した譲渡益、償還された償還差益などの利益があります。いずれの利益が出ても、それぞれ税金がかかります。税率は20.315%です。
利子は利子所得として課税されます。源泉徴収のみで申告は不要です。一方、譲渡益や償還差益は、「上場株式等の譲渡所得等」として課税されます。特定口座の源泉徴収有りであれば自動的に源泉徴収されます。
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■積極的に活用したい税制優遇
これまで説明してきた様に資産運用には税金がかかります。一般的に利益に対して20.315%の税金がかかります。資産運用で100万円の利益を出しても、約20万円は税金として支払い、手元に入ってくる金額は約80万円ということです。税金なので払わなければならないですが、実は資産運用において税金がかからないお得な運用方法もあります。
個人投資家を対象とする非課税制度のNISA(少額投資非課税制度)や私的年金である個人型確定拠出年金( iDeCo 、イデコ)です。これらの制度を活用した資産運用では、条件内であれば税金がかからない仕組みになっています。
NISAは、引き出し制限がないので、結婚や住宅資金、教育資金や老後資金などあらゆる目的の資産運用に活用ができます。
NISAは、2023年末で現行制度は終了し、24年から新NISA制度が始まります。2023年末までの成人向けのNISA制度では、「一般NISA」と「つみたてNISA」のどちらかを選択して投資する仕組みです。それぞれ年間の非課税枠や非課税で保有できる期間、投資可能商品などが決められています。
一般NISAでは、毎年120万円までの投資による利益(売却益、配当金、分配金など)が、最長5年間非課税となります。つみたてNISAでは、毎年40万円までの投資利益が、最長20年間非課税です。
24年から始まる新NISAは、更に使い勝手が良くなります。新NISAは制度が恒久化し、非課税期間が無期限化されることに加え、「つみたてNISA」は「つみたて投資枠」となり、「一般NISA」とされてきた部分は「成長投資枠」となります。「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能となり、現行NISAより年間投資枠が増え生涯の投資枠の上限は1800万円に膨らみます。
一方、iDeCoは、年金を目的とした非課税制度になります。自分で準備する年金制度で、加入する人の環境によって掛け金の上限が異なります。年金目的なので、原則60才になるまで引き出すことができません。
NISA同様に税制面でのメリットがあります。運用で出た運用益や利息は非課税になり、運用してきた資産を受け取る時も一定金額まで非課税で受け取ることができます。また、掛け金は全額所得控除ができます。
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■インフレ時代の資産防衛
年金不安やインフレ懸念などこれからの時代を生きるうえで資産運用は必須です。国も国民の資産運用を後押ししています。岸田文雄政権は、2023年を資産所得倍増プラン元年として貯蓄から投資へシフトを抜本的に進めていく取り組みをしています。その柱が先ほど紹介したNISA拡充やiDeCoの取り組みです。
また、足元ですでに感じていると思いますが、物価高などインフレへの対応も必要です。日本は過去20年以上、長いことデフレ環境で過ごしてきましたが、物価上昇を感じるように状況が大きく変わりつつあります。
例えば、株式相場は、バブル経済崩壊後の高値を更新し、外国為替相場では円安傾向が強まっています。この先は、日銀の金融政策修正など金利上昇の可能性が高まっています。現在の日本ではインフレリスクへの対策をした方が良いです。
インフレが強まる局面では、資産を現金で持っているとリスクが高まります。物価上昇と連動する形で資産運用する必要があります。株式投資はインフレリスクへの対策と成り得る運用です。
資産防衛の手段の一つとして金融資産への投資する場合に必要な知識として税金があります。それぞれの金融資産でどれくらい税金がかかるのかなど仕組みを知ることが大切です。国が勧めるNISAやiDeCoなど非課税投資枠も上手に活用し、インフレに備えた資産防衛をすることが必要です。
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