(10月4日朝の追記分:米国の金利が上昇し、株価が調整しています。来週分で金利について書くつもりです。売りが売りを呼んでいる状況で、必ずしも財政やインフレへの懸念が強まっているようには見えず、10年5%辺りでいったん上昇が止まっても不思議ではないように思えます。まだ途中なので評価を変えるかもしれませんが、データを眺めた感じでは、米国債と米株の「同時下落相場」が生じることはまれです。それこそブラックマンデーのときくらいです。今回の米国債下落相場は2020年9月から始まっていますが、今回も「同時下落相場」とは言えません。こういうと「昨年の株安はどうなのか?」と問われると思います。しかし、9月末時点の米国の株価は、今回の米国債下落相場が始まったときよりも3割超高い水準です。すなわち「大幅な金利上昇が株式の投資家をふるえ上がらせた」とは言えないのです。。。)
政府閉鎖には至らずも、不安定な要素が残る
米連邦議会の上下両院は9月30日の夜に、連邦政府のつなぎ予算を可決、バイデン大統領がこれに署名し、連邦政府の閉鎖は土壇場で回避されました。
ただし、
- 本年11月17日までの暫定予算である、
- ウクライナ支援が除外されている、
- 下院共和党の強硬派が、マッカーシー下院議長(共和党)の解任動議を提出(→10月3日に可決)
するなど、今後の動向をめぐり、不安定な要素は残ります。
政府閉鎖は回避されたものの、翌10月2日の取引では、金利上昇を嫌気するかたちで株価は下落しました。
最近の金利上昇は「政府閉鎖への懸念⇒連邦政府や議会への信頼喪失を反映している」とも言われていましたが、「政府閉鎖が回避されれば、景況感を押し下げるものがひとつ減る」ために、景気拡大見通しが以前に比べて強まり、それも金利上昇の要因となります。
ひきつづき、幅広い資産への分散投資が求められます。
いまはまだ「逆金融相場」のなか
【次の図】に示すとおり、今年8月以降、米国の中長期ゾーンの金利が上昇し、それに合わせるように株価は調整をつづけてきました。「金利上昇、株価下落」の『逆金融相場』がつづいています。まだ、しばらくはそうしたモードがつづくのかもしれません。
とはいえ、①「金利上昇の背景は、米国景気の堅調さ」ですし、②「金融市場は流行の歌やドラマのようなもの」ですからいつまでも同じテーマで取引されることはありません。
たとえば、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを「打ち止め」にすれば、変化が生じ、
A.「金利横ばい~低下、株価上昇」の『金融相場』か、
B.「金利上昇、株価上昇」の『業績相場』
に向かう可能性も十分に考えられます。
(→国債の下落や逆金融相場については、来週以降に取り上げることを考えています)
季節性は「吉」
【次の図の青線】に示すとおり、米国株式市場の予想変動性(ボラティリティ)を示す「VIX指数」は、秋にかけて上昇する場合が少なくありません。他方で(今回はそれが政府閉鎖の回避なのか)秋以降は低下する傾向にあるようです。
また、【上】に示したVIX指数と変わり映えしませんが、【次の図の青線】に示すとおり、米国の株価も夏から秋にかけて調整をし、秋以降は堅調に推移する傾向にあるようです。仮に、今年も例年どおりに動くならば、この先は、株価の回復が期待されるところです。
別途、気になる方もいらっしゃると思いますので、参考までに、米国10年国債利回りだと、【次の図】のようになります。
ドル円相場だと、【次の図】のとおりです。
株価の「季節性」を後押しするひとつのものは何か?/季節調整とは
ところで、「株価が年末にかけて調子を取り戻す」という「季節性」を演出するものは何でしょうか。
株価の基礎となるものは、ファンダメンタルズです(→ほかに、換金や新規買いなどの資金フローや需給も挙げられるでしょう)。
仮に、「年末にかけて経済指標が改善する傾向」にあれば、言い換えれば、経済指標に「季節性」があれば、それが株価を支えているのかもしれません。
とはいえ、金融市場の多くの参加者は「季節調整が施された経済指標」をみて、取引を行っています(→他方の株価は季節調整が実施されていない「生の数値」です)。
たとえば、【次の図】に示すとおり、米国の「雇用統計」(=非農業部門雇用者数)は毎年12月が最も高く、1月には低水準となる季節性があります。年末のグリーティング・シーズンに向けて臨時雇用が増え、翌年1月にはそれらの人々が解雇されるためです。
「季節調整前の数値」で前月からの雇用者数の変化をみると、「1月分は毎年大きなマイナス」=雇用の大幅減になります。しかしながら、それは必ずしも「景気の悪化」を示唆しません。
合わせて、そうした季節性が残っている(=季節調整前の)経済データを基に金融市場での取引を行うことは困難です。たとえば、1月の雇用統計が「前月比で大幅なマイナス」でも、そのうち、「①景気悪化による雇用減はどの程度で、②例年の年末越えの解雇はどの程度なのか」を逐一、分解して判断する必要が生じます。
それゆえ、金融市場での取引を含む、実体経済の状況や傾向を判断するために、多くの経済データには季節調整が施されます。
季節調整済み指数に「季節性」を見出すと・・・年末にかけ経済指標は堅調
前節で述べたとおり、季節調整済みの指数からは、長期のデータを用いて「季節性」が取り除かれているはずです。
とはいえ、最近のデータだけに注目をすれば、経済指標の出方に何らかのクセがあるかもしれません。
「季節調整済みの数値に季節性を見出す」というのは変な話ですが、仮に、そうしたクセがあるとすれば、たとえそれが本質的には景気変動とは関係がなく、取り除かれるべき季節性であったとしても、金融市場は実際にそれに反応してしまう可能性があります。以下、主要な経済指標でそれを見てみましょう。
たとえば、【次の図】に示すとおり、米国の雇用統計(非農業部門雇用者数の前月からの変化;季節調整済み)を取ると、1990年以降の景気後退の影響を受けていない「平時の年」では(→今年も「平時」と仮定)、8月を底に年末にかけて数値が改善する傾向があります。
また、【次の図】に示すとおり、米国の実質個人消費支出(季節調整済み)の前月比を取ると、1990年以降の景気後退の影響を受けていない「平時の年」では、年末にかけて数値が改善する傾向があります。
別途、【次の図】に示すとおり、米国のISM製造業景気指数を取ると、1990年以降の景気後退の影響を受けていない「平時の年」では、年初がピークで、秋までは低下、年末にかけて底打ちする傾向があります。「年末が低めで、年初が高め」ですから、底打ちする秋頃は買い場なのかもしれません(→ただし、今年は例年(平均値)とは異なる動きですので、わかりません)。
あくまで最近のデータであり、平均値でしかありませんが、主要な米国の経済指標は秋以降の「株価回復」をサポートしているのかもしれません。
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