外国為替市場では2024年に主要通貨のうち円がもっとも強くなるとの見方が優勢だ。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した12月の月次調査<外為>で市場関係者にドル、ユーロ、円の強弱関係を予想してもらったところ「円>ドル>ユーロ」と「円>ユーロ>ドル」を選んだ人が計59%に上った。背景には米欧と日本の金融政策の方向性の違いがある。
米欧の中央銀行は来年前半にも政策金利の引き下げに着手するとの見立てが多い。利下げ開始時期を聞いたところ、米国、ユーロ圏とも「24年4~6月」との予想が最多。米国は50%、ユーロ圏は49%を占めた。
これに対して、日銀はほぼ同時期に大規模緩和の修正に乗り出すとみられている。マイナス金利政策を解除する時期は「4~6月」との回答が43%で最も多く、次点の「1~3月」とあわせて約8割に達した。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは「米欧はインフレ鈍化に加え、景気も今年ほど強くない状況が続く」とみて、ともに6月には利下げに転じると予想する。米消費者物価指数(CPI)の前年同月比の伸び率は23年11月まで2カ月連続で鈍化した。ユーロ圏は7~9月期に実質マイナス成長となるなど景気後退懸念が根強い。米欧の金利低下に逆行し日本の金利は上昇する可能性があり、金利差縮小から円高が進むとの声が増えている。後藤氏は「来年前半のうちに1ドル=140円を超える円高水準を試す展開になる」とみる。
日銀がマイナス金利解除に踏み切るきっかけとなりうるのは来年の春季労使交渉(春闘)だ。労働組合の中央組織である連合は賃上げ要求水準を「5%以上」としており、日銀が目指す物価と賃金の好循環が見えてくるかがカギとなる。アセットマネジメントOneの村上尚己シニアエコノミストは「日銀はインフレ率上昇を慎重に見定めつつ政策修正を進めるだろう」と話す。
ドルが最も強くなると答えた人も35%いた。東海東京証券の吉田幹彦デット・ストラクチャード推進部長は現在の米長期金利の低下は「先走りすぎ」と指摘。「米国が利下げを始めれば日銀は政策修正に動きにくくなる」とし、円高進行に懐疑的だ。
24年の外為市場で注目されるテーマ(金融政策以外)も聞いた。「米国経済の動向」が最多で、11月の「米大統領選」が続いた。不動産危機に揺れる「中国経済の動向」への関心も高かった。昨年12月の調査で上位に入った「ロシア・ウクライナ情勢」の票数は減った。国内政治への注目も低かった。
調査は11~13日に実施し、金融機関や事業会社の外為市場関係者74人が回答した。
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