QUICKが16日発表した2月の「QUICK短期経済観測調査」(QUICK短観)で、製造業の景況感を示す足元の業況判断指数(DI)はプラス10と前月から5ポイント低下した。プラス幅を縮めるのは3カ月ぶり。比較的高水準を維持しているものの、新型コロナ禍後の回復基調にはやや足踏み感もみられる。非製造業の業況判断DIは2ポイント低いプラス30と、やはり3カ月ぶりに低下した。
3カ月後の先行き見通しは製造業が6ポイント低いプラス9で、同じく3カ月ぶりに下がった。非製造業は3ポイント低下のプラス29だった。
QUICK短観は毎月、全国の証券取引所に上場する企業を対象に業況や事業環境に関するアンケートを実施している。2月調査は1日から13日まで実施し、218社が回答した。
企業の人手不足感はなお強い。雇用人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」の割合を引いた雇用人員DIは、非製造業で前月比1ポイント悪化のマイナス61と、2019年7月以来約4年半ぶりの低水準となった。一方で製造業は9ポイント改善のマイナス29と、業種によって方向感に違いがみえ始めている。人員のひっ迫度合いは企業の賃上げ姿勢に影響する。本格化している春季労使交渉(春闘)の動向に関心が向かいそうだ。
資本コスト意識した経営への取り組み開示 「近いうちに」1割、「将来的に」4割
話題のトピックについて聞く特別調査では、東京証券取引所が1月に「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向けた具体的な取り組みを開示した企業一覧を公表したのを受け、調査対象企業に現況や今後の対応方針を尋ねた。
「すでに一覧表に入っている」と回答した企業は32%だった。調査時点で入っていないものの「近いうちに開示する予定」は12%、「将来的には開示を検討する」が40%。「開示することは特段考えていない」は7%だった。東証が2月15日に公表した一覧表の第2弾に新たに加わった企業はその後の株価上昇が目立った。市場での評価を高めるため、今後さらに開示が増えそうだ。
生成AI(人工知能)の企業での活用状況も聞いた。「すでに業務やサービスで導入した」が16%と、同様の質問をした23年4月調査(5%)から大幅に増加した。「導入を具体的に検討している」と「どう活用するかを考えている」はともに21%だった。昨年調査で4割以上を占め最多だった「しばらく様子を見る」は29%と大幅に減少した。仕事の現場での活用は着実に進んでいるようだ。
(QUICK Money World 中田真裕)