米国株式相場の第1四半期(1~3月)は2019年以来の高いパフォーマンス。四半期最終取引日となった3月28日、S&P500種株価指数は前日比0.11%高の5254.35で終えた。ダウ工業株30種平均は0.12%高の3万9807ドル37セントで引け、S&P500とともに最高値を更新した。ナスダック総合株価指数は0.12%下げた。
S&P500は年初から10.2%上昇。13.1%上昇した2019年以来の高い上昇率だ。第1四半期のダウは5.6%上昇、ナスダックは9.1%上がった。CNBCは、AI(人工知能)への期待感は衰えず、昨年のマーケットリーダーだったエヌビディアが株式市場をけん引したと報じた。エヌビディア株の四半期上昇率は82.5%、3月だけで14.2%高くなったとしている。話題を集めた「マグニフィセント7」銘柄でアップルとテスラのパフォーマンスは弱く、その分をエヌビディアが補った。S&P500の構成銘柄に採用されたAI向けサーバー製造のスーパー・マイクロ・コンピューターの上昇も目立った。
AIブームは欧州株も押し上げた。英フィナンシャル・タイムズ紙は、英国、ドイツ、フランス、スペインの主要株価指数の3月の上昇率はいずれも米国のS&P500を上回ったと伝えた。MSCI世界株指数は第1四半期に7.7%上昇、AIブームが米利下げへの期待後退を相殺したとしている。ブルームバーグ通信は、「ドットコムバブル」を想起させるような割高感のある米国株に対し、ヘッジファンドは欧州が次の世界株高をけん引すると期待していると報じた。米国市場でAI熱が高まっており、S&P500は比較的割高なテクノロジー株への依存を強めていると解説した。
AI関連銘柄を中心に大手ハイテク株にマネーが集中。ゴールドマン・サックスによると、時価総額上位10銘柄のS&P500に占める割合は33%で、2000年の「ドットコムバブル」のピーク時の27%を大幅に上回っている。S&P500の過去5年の投資リターンは年率16%で過去30年の平均10%より高く、上位10銘柄が上昇分の3分の1超を占めた。ゴールドマンのアナリストは、高水準の集中は株価下落リスクと投資家は考えるが、集中ピーク後の12カ月間はS&P500が大幅上昇する傾向があると3月28日付のメモでコメントした。バリュエーションも「ドットコムバブル」の時代より低いと指摘した。
JPモルガン・ウェルスマネジメントのストラテジストは、「バブルか至福か」と題する3月28日付メモで、今後12カ月の利益見通しで算出した予想PER(株価収益率)は5年平均を下回り、メタ・プラットフォームズを例に利益の伸びは株価上昇ペースを上回っているとコメント。バブルとは言えないとの見方だ。ストラテジストはさらに、S&P500は昨年10月以降の100日で25%上昇したと指摘。過去50年の株式相場は100日で少なくとも25%上昇した年は年末までさらに平均15%上昇しており、上昇確率は98%とコメントした。
S&P500は年初から最高値を22回更新した。投資情報誌バロンズによると、1998年以降で最多。四半期上昇率は2012年、2013年、2019年に匹敵する高さだ。バロンズは、歴史は強い勢いが続く可能性を示唆しているものの、今年の残る3四半期が第1四半期ほど上昇しない確率は低くないと報じた。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。