【NQNニューヨーク=稲場三奈】米連邦準備理事会(FRB)は29日、全米12地区連銀が管轄する地域の経済情勢をまとめた米地区連銀経済報告(ベージュブック)を公表した。経済活動は前回4月の報告時点から「拡大を続けた」と総括した。大半の地区が「わずかまたは緩やかに成長した」と報告し、2地区は「変化なし」だった。4月は10地区が「わずかまたは緩やかに拡大した」としていた。
報告の概要は以下の通り
消費については、「横ばいまたはわずかに増えた」とした。消費者がより価格に敏感になっているなかで裁量的な支出が減少した影響があった。自動車販売はほぼ横ばいだった。2~3の地区では、メーカーが販売奨励金を出していたと報告した。
製造業の活動は2地区が「縮小した」とした一方、全体としては横ばいまたは拡大した。住宅需要は緩やかに伸び、一戸建て住宅の建設が増加した。景気見通しは不確実性の高まりやより大きな下振れリスクのなかで、「どちらかというといくらか悲観的」だった。
雇用は総じてわずかに拡大した。大半の地区が労働人口の増加に言及した半面、業界や地域によってはいくらかの人手不足が引き続きみられた。複数の地区は「離職率は減少した」とし、ひとつの地区は雇用主の交渉力が上がったと指摘した。見通しはまちまちで、2~3の地区は緩やかな雇用増加の継続を予想。そのほかの地区は事業の需要の弱まりや不確実な経済環境から、雇用が予想より伸びないとみていた。
賃金は大半の地区で「穏やかな上昇が継続」し、いくつかの地区は「さらに穏やかな上昇」を報告した。いくつかの地区では新型コロナウイルス禍前の水準に戻ったか、戻るための正常化が進んでいたと言及した。
物価上昇は「緩やかなペースで拡大した」。大半の地区は消費者が追加値上げに対して消極的だったため投入価格が平均的に上昇し、利益率が低下したと指摘。多くの地区が保険料などの上昇が続いたとする一方、いくつかの地区では特定の建設用材料価格が下がったと報告した。いくつかの地区では製造業の原材料が値下がりした。短期的な物価上昇は「緩やかなペースでの拡大が続く」と見込んでいた。
今回のベージュブックはFRBが6月11~12日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)の討議資料となる。