6月27日に、今秋の米大統領選挙の主要な候補者であるジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領の2人による第1回の討論会が実施されました(→全2回の予定で、次回は9月10日に予定。投票日は11月5日)。
すでに報道されているとおり、専門家や世論調査によると、(討論会の後半になるにつれてバイデン氏が盛り返したものの)「トランプ氏が優勢だった」との評価が多かったようです。
討論会の直後、主要なメディアは「バイデン氏の出馬辞退の可能性」について報じました(→一部のメディアでは、そうした主張・論説が維持されているようです)。
他方で(同じく討論会の直後)、民主党の幹部や、バイデン氏の代わりとなる可能性のある候補者たちからは、「再選を目指すバイデン氏の意志は固い」、「今から候補者を変えても(全国的認知度の低い)代替候補への支持は広がらない」といった意見が優勢でした。
実際、バイデン氏は討論会の後に演説をし、「(困難を乗り越えて)勝利する」と宣言し、選挙戦の継続を表明しました(→一部のメディアは、バイデン家と、選挙戦の継続に難色を示す民主党重鎮とのあいだの確執を報道しています)。
今回の討論会をもとに「トランプ氏で決まり」かと言えば、それはまだわかりません。
各種の報道にしたがうと、1984年のレーガン大統領、2004年のジョージ・W・ブッシュ大統領、2012年のオバマ大統領などは、再選(2期目)を目指した最初の討論会では「顔が飽きられたり、自慢げな態度が鼻につく」などとして劣勢に立たされたようです。ただ、いずれもその後の討論会では盛り返し、再選を果たしています。
他方で、トランプ氏が無事に共和党の大統領候補として11月5日の投票日を迎えられるか、利権を維持すべく彼の再選を阻もうとする勢力がどう出てくるか、まったくわかりません。
投資家は予断を持つべきではないでしょう。
【参考】もしジタ(もしも、どちらかの候補が辞退する場合)
今般、バイデン氏は選挙戦の継続を表明しましたが、複数の刑事裁判を抱えているトランプ氏を含め、大統領候補が辞退もしくは死亡する場合の流れをみてみます(→以下では、民主党を例に挙げます。共和党の場合もおおむね同様です;各種の報道を参考にしていますので、割り引いてご確認ください)。
【ケース①:バイデン氏が、8/19-22開催の民主党全国大会(DNC)までに辞退もしくは死亡する場合】(全国大会でバイデン氏に投票することを確約していた、民主党の場合3,900人を超える)すべての代議員たちは(ルール上は)「自由投票」となり、彼らそれぞれが全国大会でふさわしいと考える候補者に投票をし、民主党の大統領候補が決定されます。
では、その「自由投票」の全国大会で「誰が選ばれるか」と考えると、先に述べたとおり、ほとんどすべての代議員たちはバイデン氏に忠誠を誓い、同氏の選対本部からも承認された上で、同氏に投票するために全国大会に集められるため、バイデン氏が後継候補として支持を表明する候補者が選ばれる可能性が高いと考えられます。
(バイデン氏が支持を表明する可能性がある)民主党の候補としてはたとえば、ハリス副大統領、ニューサム・カリフォルニア州知事、プリツカー・イリノイ州知事、ブティジェッジ運輸長官、ホイットマー・ミシガン州知事、シャピロ・ペンシルベニア州知事、ポリス・コロラド州知事、ウォーノック上院議員(ジョージア州選出)、クロブシャー上院議員(ミネソタ州選出)、ベシア・ケンタッキー州知事、ブッカー上院議員(ニュージャージー州選出)、ミシェル・オバマ氏(バラク・オバマ元大統領夫人)などが挙げられます。
【ケース②:バイデン氏が、8/19-22開催の民主党全国大会(DNC)の後に辞退もしくは死亡する場合】民主党の全国委員会が、民主党出身の州知事と連邦議会の民主党幹部たちと協議し、候補者を決定します(→共和党の場合には、ふたたび全国大会を招集するか、当委員会が決定するかが選択されます)。
【ケース③:11月5日の投票で多数票を獲得した大統領候補者が、同日以降、翌年1月20日の大統領就任までに辞退もしくは死亡する場合】両日に加えて重要な日付が2つあります;①12月17日:大統領選挙人による投票、②翌年1月6日:米連邦上下両院合同会議での「大統領選挙人による投票の開票」です。合衆国憲法修正第20条は、次期大統領(President-elect)が1月20日の就任日前に死亡した場合には次期副大統領(Vice President-elect)が大統領になると規定しています。
問題は、11月5日の多数票獲得者がいつ、修正20条にある「President-elect」や「Vice President-elect」になるかです。1月6日の「大統領選挙人による投票の開票」以降であれば間違いなくそうですが、それ以前の場合は不透明です。辞退もしくは死亡が、①12月17日の「大統領選挙人による投票」の前に生じるか(→大統領と副大統領の候補者氏名を変更するかどうか)、あるいは、②12月17日から1月6日の「大統領選挙人による投票の開票」の間に生じるか(→17日の投票時点で辞退者もしくは死亡者がPresident-electだったとするかどうか)、いずせにせよ、これら2つのイベントを経る必要があります。
バイデン、トランプ両氏の公約や主張を比較
次の2つの図に、両氏の選挙公約や主張の一部を示します(各種の報道を含みますので、その分を割り引いてご確認ください)。
誰が勝つ?金融市場はどうなる?
誰が勝つか、金融市場はどうなるか、どちらも全くわかりません。
2016年の大統領選挙がその好例です。選挙結果については、投票前は「ヒラリー・クリントン氏が優勢、トランプ氏は劣勢」と言われていましたが、当選したのはトランプ氏でした。
また、金融市場の反応については、投票前は「トランプ氏が当選すると、リスク回避姿勢から、株価は下落し、債券は買われる」と言われていましたが、トランプ氏が当選すると株価は大幅に上昇し、債券は売られて金利が上昇しました。いわゆる「トランプ・ラリー」です。
この例がわれわれ投資家に示しているのは、「幅広い資産で分散するほうがよい」ということでしょう。
「筆者の予想や想定も当てにならない」ことを強調しておきますが、まず、株式市場を考えると、トランプ氏が大統領になり、上記の公約や主張を実現する場合、企業の業績や活動にとって相対的に有利に働く可能性があります。そして、これらが織り込まれる場合、株価は上昇すると考えられるでしょう(→ただし、同氏の相対的に強い保護主義のスタンスは、企業の調達コストを引き上げたり、販売活動を制限したりする可能性があります)。
債券市場にとってみると、景気拡大の継続観測と(関税引き上げを含む)インフレ懸念が金利上昇圧力として働く可能性があります(→ただし、原油や天然ガスの規制緩和による増産はインフレ圧力を緩和する可能性があります)。
為替は(も)わかりません。トランプ氏の保護主義的な面にフォーカスが当たれば(同氏がそうした政策や方針を示す前から)ドル安に転じる可能性があります。逆に、景気拡大やインフレ懸念で「高金利継続」に焦点が当たれば、ドル高基調が継続する可能性が考えられます。
バイデン氏が再選される場合、少なくとも上院は共和党が過半数を取り戻す可能性があるため、そうであるならば、同氏の政策は進まず、経済政策では、減税や規制緩和を求める共和党に譲歩を迫られる可能性もあるでしょう。
今後の変動性の高まりに備えて、十分な分散投資が望まれます。
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