外国為替市場で、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ転換が近いとの見方が強まっている。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した7月の月次調査<外為>では、FRBが利下げに転換する時期を「9月」とみる市場関係者が65%を占めた。早期の米利下げ転換観測が、歴史的な円安・ドル高に歯止めをかけるかも焦点になる。
前月調査では年内の米利下げ回数を「1回」とみる予想が多かったが、足元は「2回」の予想が増加。早期の利下げ転換予想の増加は、6月の米雇用統計が労働需給の緩みを示す結果となったことがある。パウエルFRB議長が9日、米経済について「もはや過熱していない」と述べたことも後押しとなった。
一方、日銀の金融引き締めについても前倒しを見込む声が聞かれる。日銀の次の利上げ時期予想は「9月」が30%と最も多く、「10月」が26%、「7月」が23%と僅差で続いた。賃金上昇や円安が日銀の早期利上げを後押しするとの見方がじわりと増えているようだ。
日銀は7月の会合で国債買い入れの減額計画を決める。減額幅は4割の回答者が「2兆円程度」と予想した。買い入れ減額の効果を見極めるまでは利上げを急がないとの見方も根強い。外為どっとコム総合研究所の神田卓也取締役は、マイナスに沈む需給ギャップなど弱い指標もみられるなか「日銀が景気を犠牲にしてまで追加利上げに動くとは考えにくい」とする。
円高転換へのきっかけについては、「FRBの利下げ」が85%と最多。11日発表された6月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り米利下げ観測が強まったのを機に、円相場は1㌦=一時157円台まで約4円上昇しており、米景気指標への関心は強い。次いで「日銀の利上げ」が66%だった。
両中銀が政策修正を慎重に進める限り日米金利差の大幅な縮小にはつながりにくいため、「世界的な株価の急落」(44%)で海外株投資にブレーキがかかることなどが円高への転機になるとの声もある。
米大統領選の為替相場への影響は読みづらい情勢だ。トランプ前大統領が当選した場合の年内の円相場への影響を聞いたところ、「円高・ドル安になる」、「円安・ドル高になる」がそれぞれ42%で並んだ。
トランプ氏が財政拡張を進めれば金利上昇からのドル高が想定される。半面、景気浮揚のためFRBに対して金融緩和圧力をかける可能性も意識される。
調査は7月8~10日に実施し、金融機関や事業会社の外為市場関係者72人が回答した。