【日経QUICKニュース(NQN)】金融情報会社のQUICKは24日、「どう読む米大統領選 経済・マーケットへの影響は」と題した討論会を開いた。11月投開票の米大統領選の金融市場への影響について、共和党候補で財政拡張的な政策を主張するトランプ前大統領が当選した場合には「米長期金利が上昇する可能性が高い」「ドル相場が一方向に動くと決めつけるのは危険」などの指摘があった。
丸紅経済研究所の今村卓所長が基調講演し、「トランプ氏が強調する関税や米製造業の復活に関する政策を進めた場合、世界の分断が加速し、世界国内総生産(GDP)が7%減るとの試算もある」と警鐘を鳴らした。
バイデン大統領が選挙戦からの撤退を表明し、民主党ではハリス副大統領が候補になるとの見方が広がっている。今村氏は「ハリス氏が候補となった場合はバイデン氏の下で離れていた黒人や若者の支持が戻ってくる可能性があり、トランプ氏と接戦になる可能性がある」との見方を示した。
パネルディスカッションにはみずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミスト、三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジスト、三菱UFJ信託銀行の芳賀沼千里チーフストラテジストが登壇した。
瀬良氏は米大統領選の債券市場への影響について「共和党の方が民主党よりも減税など財政拡張的な政策を示しており、トランプ氏が当選した場合は相対的に長期金利が上昇する可能性がある」と述べた。大統領選だけでなく、連邦議会の上下両院選も共和党が制する「トリプルレッド」となればさらに影響を及ぼすとの見方を示した。
為替市場に詳しい唐鎌氏は「トランプ氏はドル安を好んでいるようだが、大統領時代は結果的にドル高となった。通貨金融政策に定見がないように見受けられ、同氏が当選した場合にドル相場が一方向に動くと決めつけるのは危険」と指摘した。米連邦準備理事会(FRB)の政策運営が選挙の影響を受けることはないとの見方を示し、「トランプ政権が発足したとしても(インフレ的な)政策の影響が経済指標に反映されるのは来年半ば頃。それまで利下げがしやすい環境は続く」として2025年も3月と6月の2回は利下げをすると予想していた。
芳賀沼氏は株式市場について「共和党の政策は前回のトランプ政権時から大きく変わっていない。選挙の結果よりも景気や業績の影響の方が大きい」と述べた。米国では財政赤字が拡大し、個人消費も低調だと指摘して「米経済は弱い。FRBが利下げしても株は下げ止まるとは限らない」と話した。