【QUICK Money World 辰巳 華世】株価の値下がりで「追証(追い証)」が発生--。信用取引で気をつけなければならない一つがこの「追証」(信用取引の証拠金追加差し入れ)です。今回は、追証とは何かの基本的な説明から、発生条件や発生原因、追証発生を避けるためのポイントや、追証が発生してしまった時の対応について詳しく説明します。
追証=お金を払う行為なの?
追証とは、「追加保証金」の略称で「おいしょう」と読みます。信用取引などで差し入れた「委託保証金」が株価の値下がりなどによって、保たなければならない水準を割り込んだために、「委託保証金」を更に追加で差し入れなければならない状態のことです。
投資の世界では、担保を差し入れて、手元資金以上の金額の取引ができる取引がいくつかあります。信用取引、外国為替証拠金(FX)、先物取引などはレバレッジを効かせた取引になります。今回は、株式での信用取引を例にしながら追証について見ていきましょう。
信用取引では、現金や株式などを担保として証券会社に預けます。信用取引は担保として預けた額以上の金額で取引ができ、最大約3.3倍のレバレッジが掛けられます。追証は、担保にしている株が値下がった時や取引で含み損が出た時などに決められた担保の水準が保てなくなった時に発生します。詳しく見ていきましょう。
追証が発生する条件
信用取引で追証が発生する条件は具体的には2つあります。この2つの両方をクリアしないと追証が発生することになります。
①委託保証金が30万円を下回った時 ②委託保証金維持率が証券会社が指定する水準を下回った時 |
信用取引を始めるために預けた担保を「委託保証金」と呼びます。信用取引における「追証」を理解するためには、この「委託保証金」に関するルールを知る必要があります。
委託保証金のルール
「委託保証金」は、最低30万円以上、信用取引する額(約定代金)の30%以上が必要になります。100万円の約定代金であれば、30万円(100万円×30%)の委託保証金が必要です。この約定代金に対する委託保証金の割合を「委託保証金率」と呼び、証券会社によって若干数字は異なるので取引を開始する時には確認しましょう。
委託保証金維持率とは?
信用取引では、委託保証金を入れて取引をします。この委託保証金、最初に入れたらそれで終わりなものではなく、信用取引をしている間は常に意識しておく必要があります。
約定した銘柄は日々値動きがあり、この委託保証金も日々変動します。信用取引では、取引額における委託保証金の割合を一定以上に維持することが求められます。これを「委託保証金維持率」と呼びます。
「委託保証維持率」は証券会社によって異なりますが、最低20%以上の維持が必要になります。信用取引を開始する場合には利用する証券会社の委託保証維持率を確認しましょう。
追証が発生してしまう原因
追証は、①委託保証金が30万円を下回った時、②委託保証金維持率が証券会社が指定する水準(最低20%)を下回った時に発生します。
「委託保証金」は日々の値動きで増減するので、信用取引をしている間は常に意識しておく必要があります。
委託保証金が増減する原因を知りましょう。大きく2つです。担保の株が値下がりした時と信用取引で含み損が発生した時です。
- 担保にしている株が値下がりしたとき
委託保証金は、現金だけでなく株式などで差し入れることも可能です。担保として差し入れた銘柄の株価が値下がりし、含み損が出るとその分だけ委託保証金の評価も下がります。逆に、値上がりした場合は、保証金換算率を乗じた額が保証金に上乗せされます。ちなみに、担保として対象となる株式や換算率などは証券会社によって異なるので確認しましょう。
- 買い建て・売り建てた株式に含み損が発生した時
信用取引で買い建てや売り建てで約定した株式に含み損が発生すると、含み損の分だけ委託保証金が減ります。ちなみに、信用取引で買いから入ることを買い建て、売りから入ることを売り建てと言います。買い建ては、委託保証金を担保に証券会社から株式買付代金を借りて株式を買うこと、売り建ては、将来的に値下がりすると判断した投資対象を売って、値下がりした時点で買って収益を上げる投資手法のことです。
例えば、信用取引で委託保証金45万円を入れ、150万円分買建てたとします。しばらくすると150万円が130万円に値下がりし、20万円の含み損が出ました。委託保証金の評価は25万円(45万円ー20万円)になります。
この時の委託保証維持率が追証発生に大きく関係します。このケースだと、委託保証維持率約16%(25万円÷150万円)となり追証が発生することになります。
追証が発生してしまった失敗例
追証が発生しやすい例を見ていきましょう。
- 信用取引で高いレバレッジをかけてしまう
信用取引は担保として預けた額以上の金額で取引することができ、最大約3.3倍のレバレッジが掛けられます。少ない資金で大きな取引をすることで、大きな利益が狙えますが、失敗すればその分だけ含み損も大きくなり、追証が膨れ上がることになります。
- 「信用二階建て」で取引をしてしまう
「信用二階建て」とは、現物で購入した株式を担保にして、信用取引でも同じ銘柄の買い建てを行うことです。株価が上昇している時は良いですが、株価が値下がりした場合、信用取引による含み損に加え、担保として差し入れた株式の含み損も同じだけあり、わずかな株価の変動で委託保証金率が保てなくなる可能性が高いです。
追証の発生を防ぐポイント
信用取引をする場合は、追証を発生させないように注意することが大切です。追証発生を防ぐポイントを見てみましょう。
限度枠ギリギリの取引をしない
信用取引では最大3.3倍のレバレッジを掛けた取引が可能ですが、追証の発生を防ぐには、ある程度ゆとりを保った取引をすることが大切です。レバレッジのかけすぎには注意しましょう。
保証金は現金で委託する
委託保証金が増減する原因の一つに、担保で差し入れた株式などの価格変動があります。委託保証金を100%現金ですれば、委託保証金の目減りは信用取引をしている銘柄の含み損だけで済みます。
早めの損切りを心がける
追証が発生する水準まで含み損が広がる前に、損切りすることも一つの手です。損切りとは、投資家が損失を抱えている状態で保有している株式等を売却して損失を確定させることです。追証が発生する前であれば、損失は出ますが追証の準備は不要になります。
株式投資の知識を復習する
信用取引は少額の手元資金で大きな取引ができる取引です。そのため、「大きな利益が見込める」、「儲かる」など良い面ばかりが注目されることがあります。しかし、実際は、良い面だけでなく、レバレッジが掛かる分、損失が大きくなる可能性や含み損による追証が発生することがあったりと悪い面もあります。
追証が発生した理由の中には、利益を追求しすぎたり良い面だけに注目し偏った知識で取引をしてしまった可能性もあります。知識面で不安を覚えた方は、もう一度株式投資について復習するのがおすすめです。
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もしも追証が発生したときの対応
ここからは、もしも追証が発生したときの対応について見てみましょう。
追証が発生すると、追証発生の遅くとも翌々日までに追証を解消する必要があります。あまり時間の猶予はありません。追証を解消する方法は2つあります。
- 必要な額分の現金や新たな株式などを差し入れる。
- 必要な額分に相当する建玉の一部を決済する
追証は、例えば翌日に株価が追証とならない水準まで回復しても、解消することができません。追証解消には、指定された期日までに必要額の追証を差し入れなければなりません。
追証が支払えなかった場合どうなるのか?
追証が期日までに払えない場合は、証券会社のルールに則って全建玉の反対売買などが行われます。反対売買だけで不足金が解消しない場合には、不足額を入金する必要があります。
さらに不足額を入金することもできなかった場合は、不足額が入金されるまで証券会社からの請求が続くことになり、場合によっては裁判所からの一括請求が届く可能性もあります。それでも、払えなければ、財産の差し押さえなど法的な措置もあり得ます。
追証を払えない場合の解決策
追証が払えない場合、最悪は債務整理を実行する事態になることも考えられます。民事再生法に則って裁判所に返済不能を申し立て、借金を大幅に減額する個人再生や、裁判所から支払いができないと認められたうえで借金を免除してもらう自己破産などが考えられます。
個人再生では、全額が免除にならない代わりに、財産を処分する必要はありませんが、返済を続けていく必要があります。
自己破産では、督促から解放されますが、自分が持つ財産が処分されて返済に充てられます。
ただ、どちらにしても社会的信用が大きく損なわれ、その後の人生にも大きな影響を与えるので避けたいところです。
信用取引は、レバレッジを効かせた取引で、大きな利益が狙える一方で、含み損による追証の発生など損失も大きくなります。信用取引をする時には、追証が発生しないように注意しながら取引をすることがとても大切です。
まとめ
追証とは「追加保証金」の略称であり、委託保証金を追加で差し入れなければならない状態のことです。追証が発生してしまう例として、信用取引で高いレバレッジをかけてしまう、「信用二階建て」で取引をしてしまうなどがあります。追証発生を防ぐためにも、無理な取引は辞めましょう。
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