9月26日のニューヨーク商品取引所(COMEX)で金(ゴールド)が最高値を更新、初めて1トロイオンスあたり2,700ドルを突破した。最高値更新は5営業日連続で、いわゆる「青天井」が続いている。
年初より長期的に見て緩やかな上昇傾向を維持しているが、9月に入りスピードが加速した。きっかけの一つは米国の大幅利下げだ。一般に、利下げが実施されると金など実物(利息のつかない)資産の価値が相対的に上がると言われている。加えて年内の追加利下げ観測が広がっていることも金投資の追い風となっている。
2024年の値動きに注目すると、昨年末比では約30%(日本時間9月27日午前0時)上昇した。これはS&P500の同じく約20%を上回る。ただし、投資対象として比較するには、配当や為替などを考慮しなければならない。
そこで、国内の金投資先として、金が対象の国内上場ETFで売買代金が最も多い純金上場信託(現物国内保管型)(1540)(以下純金信託ETF)と、米国株投資で個人投資家に人気のeMAXIS Slim米国株S&P500(以下S&P500投信)、世界分散投資として人気のeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)(以下オルカン投信)を比較してみる。いずれも基本的に分配金は支払われず、価格または基準価額の上下がパフォーマンスに直結する。
結果は上の通りだ。S&P500投信は昨年末比で約24%、オルカン投信は約22%上昇したのに対して、純金信託ETFは約32%上昇しており、純金信託ETFがS&P500およびオルカン投信をパフォーマンスで上回っていることが分かる。
これは現時点での比較であり、投資対象としての優劣をつけるものではない。年により「金が強い」のか「株式が強い」のかは異なるのが一般的である。そこで、長期的目線として、コロナ禍の直前である2019年末との比較も紹介する。
価格の推移を視覚的に捉えられるよう、今度は相対チャートで比較する。上図は左端の2019年12月30日の終値を100とした場合の2024年9月27日までの値動きを表している。青線が純金信託ETFで229.98(+129.98%)、緑線がS&P500投信で同247.91(+147.91%)、赤線がオルカン投信で同213.22(+113.22%)である。S&P500投信には劣るものの純金信託ETFも遜色無い上昇率となっており、またオルカン投信に対しては、この期間においてもパフォーマンスで上回る結果となった。
金に関しては、中国やロシア、インドなどが外貨準備の中で金の割合を高めているとの指摘もあり、このことは需給の面からプラス材料であると言える。
一点、日本国内での金投資においては為替の影響を加味する必要がある。仮にNY金の上昇以上に円高が進行した場合は、国内の金価格が下落することもある。海外の動向もさることながら、日本国内、例えば利上げの有無などにも注意すべきであろう。
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