トランプ氏勝利確率60%。分散型予測市場プラットフォーム「ポリマーケット」で、11月5日の米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が民主党候補のハリス副大統領を破る確率が10月に入り急上昇。ハリス氏の勝利確率より約20%高い。ペンシルベニア州をはじめ、全ての激戦州におけるトランプ氏の勝利確率もハリス氏を上回った。
2024年大統領選で「賭けサイト」が存在感を増した。最も人気があるのはニューヨークを拠点にするポリマーケット。米連邦控訴裁判所が選挙結果を対象とする賭博を合法とする暫定判断を下したことで注目をさらに高めた。米ドルと連動したステーブルコイン「USDC」で大統領選の勝者予想に賭ける。例えば60セントで賭けたトランプ氏が勝利すると、1ドルの価値になる仕組み。「お金を賭けているので世論調査より正確」。トランプ氏を支持する実業家イーロン・マスク氏はコメントをつけてポリマーケットのスクリーンショットをXに投稿した。
トランプ氏圧勝を予想するポリマーケットと異なり、有権者を対象にした世論調査はハリス氏との接戦を示唆している。リアル・クリア・ポリティクスの各社調査の20日時点の集計によると、全米ベースでハリス氏が0.9%リード。激戦州はトランプ氏が1%優勢。2020年大統領選前の同じ日の調査ではバイデン氏が8.6%優勢だった。世論調査で2024年の選挙結果は読めない。
賭けサイトと世論調査。どちらが正しいのか。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は18日、ポリマーケットの4つの口座が3000万ドル(約45億円)相当の暗号資産(仮想通貨)をトランプ氏勝利に賭けたとする「トランプ派の3000万ドル賭けのミステリー」と題する記事を掲載した。4口座の投資パターンは類似しているとしている。大儲けを狙った可能性もある一方、ソーシャルメディアのバズ(buzz)を目的にしたとの見方もあると伝えた。
フィナンシャル・タイムズ紙も同じ日、暗号資産ベースのポリマーケットで小グループがトランプ氏の勝率を一時62%に押し上げたと報じた。トランプ氏勝利に賭けた4つの大口顧客の情報はほとんどないが、1人もしくは1グループの可能性があると専門家は指摘したとしている。ポリマーケットと競合するプレディクトイットは、2016年大統領選で、ヒラリー・クリントン氏敗北の前に勝率を80%としていたと伝えた。
米大統領選が約2週間後に迫った。CNNよると、1100万人の有権者が20日までに期日前投票を済ませた。賭けサイトは操作された可能性が指摘され信憑性に疑問符がつくが、投資家の行動にある程度の影響を与えているようにみえる。トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ株は高く、トランプ氏の政策がネガティブに影響すると予想されるメキシコペソと人民元は軟調だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、投資家の一部は、選挙に伴うボラティリティーにどう向き合うか探っていると報じた。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。