11月5日の米大統領選後に2つの金融資産の方向が変わった。年初から約30%上昇していた金(ゴールド)の相場は膠着状態。対照的に暗号資産(仮想通貨)ビットコインは選挙後に約45%上昇している。4日の取引で心理的な節目の10万ドルを突破した。ヘッジファンド「シタデル」創業者のケン・グリフィン氏は5日、ニューヨーク・タイムズ主催のイベント「ディールブック・コンファンレンス」で、投資家のFOMO(取り残される恐怖感)がビットコイン相場を押し上げたとコメントした。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長もビットコインの10万ドル突破に寄与したかもれない。マーケットウォッチはこう報じた。パウエル議長は先週のイベントで、ビットコインについて、「金(ゴールド)のようなもの。ドルと競合せず、金と競合する」と発言した。仮想通貨業界では「ビットコインはデジタル・ゴールド」とされてきた。国家や金融機関に左右されないなど共通点が多い。CNBCは、FRB議長による金との比較はビットコインが主要金融資産になったという意味で重要とするLMAXグループのストラテジストの発言を伝えた。「金の時価総額はビットコインの約10倍あり、ビットコインの上昇余地は大きい」との考えを示したとしている。
トランプ次期米大統領の閣僚・高官人事に仮想通貨業界が沸いた。証券取引委員会(SEC)委員長にポール・アトキンス氏を指名するとSNS(交流サイト)「トゥルース・ソーシャル」に4日、投稿した。アトキンス氏は仮想通貨推進派として知られ、仮想通貨を敵視したゲンスラー現委員長から方針転換するとの期待が高まった。トランプ氏は10万ドル突破を受け「ビットコイナーおめでとう!!!」と投稿。特定の金融商品の上昇を現役・次期首脳が直接言及・祝福するのは異例だ。翌5日、トランプ氏はホワイトハウスの「人工知能(AI)・仮想通貨の皇帝」に著名ベンチャー投資家のデービッド・サックス氏を指名。ウォール・ストリート・ジャーナルは、シリコンバレーで最も声高にトランプ氏を支持した1人で、賛同した献金者は仮想通貨にやさしい政策を期待したと報じた。
スカイブリッジ・キャピタル創業者のスカラムッチ氏は、ブルームバーグ通信のインタビューで、ビットコインが10万ドル台に乗せたことについて、15年前の5セントから1億9999万9900%上昇しただけではなく、信念を持ち続けた全員が受け入れられた証しだと述べた。現物ETF(上場投資信託)の導入で、公的年金を含む機関投資家のビットコイン投資は拡大。上昇基調は続くと見方が多いが、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストは「フロス(泡)」を警戒。ブルームバーグ通信によると、BofAのハートネット氏は、米国株と仮想通貨が来年初頭に「オーバーシュート」するリスクがあるとコメントした。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。