78歳7カ月で第47代米大統領に就任したドナルド・トランプ氏。バイデン前大統領の78歳2カ月を上回り、米国史上最高齢で2期目をスタートした。就任初日は早朝の礼拝から深夜のパーティーまで数多くのイベントをこなした。不法移民送還とエネルギー支配などの公約に沿った大統領令を連発。バイデン前政権から大胆な政策転換だ。24日にはハリケーン被災の東海岸ノース・カロライナを訪問後に甚大な山火事被害の西海岸ロサンゼルスを視察。続いてラスベガスに移動した。バイデン氏と対照的だ。最高齢を感じさせない精力的な行動が印象に残る。
ホワイトハウスのホームページは宣誓直後に更新、「アメリカ復活」と太文字で強調。最初の100時間は「米国の黄金時代をはじめる歴史的な行動」として大統領令と行動をまとめて説明した。フィナンシャル・タイムズの米国担当コラムニストは、「トランプ氏は権力のピークにある」と指摘。2026年の中間選挙で共和党が議会で過半数を失う可能性があり、障害の少ない今、トランプ氏の思い描く米国に変えようとしていると伝えた。ウォール・ストリート・ジャーナルは、非常に速いペースで行動するのは、共和党が議会を支配、支持率の高いうちに公約を実行する必要があるとのトランプ氏の認識があると解説した。リアル・クリア・ポリティクスがまとめた就任後に実施された世論調査は51.5%がトランプ氏を支持、不支持の43.0%を大幅に上回った。
金融市場は関税に注目。就任した週の米国の主要株価指数はいずれも上昇。S&P500種株価指数は23日に最高値を更新した。CNBCは、投資家がトランプ氏のビジネス支援策を好感、関税ですぐに行動しなかったことで安堵感が広がったと伝えた。関税に関しトランプ氏は26日までに、カナダとメキシコに2月1日から25%、中国に10%の関税を課す可能性を示唆。25日のラスベガスでの演説では、急速に国内の工業化を進めるため57%の関税をかけたウィリアム・マッキンリー第25代大統領(1897~1901年に在職)に言及、「関税と人材により米国を豊かにした」と高関税と異例の人材登用の正当性を強調した。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、「タリフ(関税)マン」と自称したマッキンリー大統領は、最終的に米国企業の海外展開を支援するため貿易相手国との互恵関係を提唱したと伝えた。トランプ氏は政府機関に貿易関係の精査を指示、いずれ具体策が決まる可能性は高い。米商務省の統計によると、2024年1~11月の対米貿易額はメキシコが最大で、カナダ、中国が続く。貿易額で日本は5番目、対米貿易黒字額(米国の赤字)はカナダを上回り7番目に大きい。主要貿易相手国の日本にトランプ氏が言及しても驚きはない。
投資家はトランプ氏の金融政策への介入を警戒している。24日のダボス会議でのリモート演説で、石油輸出国機構(OPEC)に原油価格引き下げを要請、「原油が下がれば、政策金利を直ちに引き下げるよう要求する」と述べた。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長と「適切なタイミングで会う」と語った。トランプ氏に近いFOXニュースは、大統領が金利と仮想通貨をめぐりFRBと戦おうとしていると報じた。FRBのビットコイン保有は法で禁じられているとパウエル議長は主張している。
トランプ氏の「スタートダッシュ」は減速しそうにない。伝統的に注目される「就任後最初の100日」を意識する可能性もある。関税と金利に加え、減税をどう具体化するか。投資家が注視しており、トランプ氏の発言と行動が金融市場の最大の材料になる状況は続きそうだ。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。