日本人を含めロサンゼルスを訪れた観光客はテスラ車が多いとの印象を得て帰る。特に西部地区は多く、駐車場の3分の1がテスラ車でも驚かない。誰の目にもテスラは電気自動車(EV)のトップブランド。個人的にテスラ車を購入して2年と5カ月。満足していて、クルマは「テスラ一択」と思っていた。次をどのモデルにしようかと考えはじめたところ、少し心配になった。狙われるかもしれない。治安が良いとは決して言えない米国では脅威。テスラ・ブランドが揺らいでいる。
米国の9つの州で、テスラ車のショールームが襲撃され、テスラの充電施設「スーパーチャージャー」も破壊行為の対象になった。テスラ車が銃撃を受け、放火される事件が相次いだ。NBCをはじめTVネットワークが連日報道。米連邦捜査局(FBI)は、テスラ車の所有者は警戒を怠らないよう異例の警告を発した。テスラの株価は年初から約40%下落。先週まで週間ベースで9週連続下げた。昨年12月につけた高値からの下落率は約50%に達した。「非常に厳しい」とイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が弱音を吐くほど株式は売られた。マスク氏が「報復関税で生産コストが上がる」とトランプ大統領に懸念を表明したとの報道もある。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、テスラの元熱狂的ファンがテスラ株を売却していると報じた。販売低迷とサイバートラックのリコールなど事業課題に加え、マスク氏の率いる政府効率化省(DOGE)主導の大量解雇やSNS(交流サイト)投稿が反発を招き、政府業務でテスラの経営ができないとの懸念が投資家を遠ざけているとしている。自動車情報サイトのエドマンズによると、他メーカーの新車・中古車を販売するディーラーのテスラ車の下取り台数が3月に過去最高を記録。SNSのレディットに「テスラ株ショート(売り)」を扇動する投稿があった。CNBCは、テスラ・ブランドはどの自動車メーカーよりもCEOと密接に結びついていると解説した。テスラ売りは「マスク売り」だ。
トランプ政権はマスク氏の支援に動いた。トランプ氏はホワイトハウスでテスラ車に乗り込むパフォーマンスを披露、新車を購入すると述べた。テスラ車に対する攻撃はテロとみなすと非難もした。ラトニック商務長官は、FOXのインタビューで、「テスラ株を買え」と現役閣僚として異例の発言で注目を集めた。マスク氏は動画中継した20日のテスラ全社会議で従業員に自社株を手放さないよう呼び掛けた。
時価総額が急激に縮小し、大型ハイテク7銘柄からテスラを外して「マグニフィセント6」と呼ぶ投資家もいる。トランプ政権への関与の代償はあまりにも大きいが、マスク氏はDOGEトップを少なくともあと1年続ける意向。Xを経由した政治的なメッセージ発信が止まる兆しはない。投資家は4月初めに公表されるテスラの1~3月期の販売データに注目。世界のベストセラー「モデルY」の新型の販売が開始された時期でもあり、株価に影響すると予想される。トランプ氏と並びマスク氏をめぐる報道はまだまだ続きそうだ。
(このコラムは原則、毎週1回配信します)
福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。