トランプ米大統領は1日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして、輸入制限を発動する方針を表明した。鉄鋼は25%、アルミニウムは10%の追加関税を課すといい、保護主義懸念からドル売りの流れが強まった。米中貿易摩擦を警戒してダウ工業株30種平均は前日比420ドル安に沈んだ。
ゴールドマン・サックスは同日付のリポートで「追加関税の導入は、米国の同盟国を含む様々な国が対象になるだろう。今後、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉や通商法301条など通商に関する議論が難航する公算が大きい」との見方を示した。
NAFTAについては「テクニカルな小さな問題では合意できるかもしれないが、政府調達開発協定など主要な問題での交渉は難航する公算が大きい。トランプ大統領はNAFTA離脱を表明するかもしれないが、短期的に可能性は低い」とみる。通商法301条については「トランプ政権は中国企業の米国での投資を制限する公算が大きい」という。
ゴールドマン・サックスは「追加関税の導入は2か月前から想定していたが、米政府が通商に対して規制強化の方向にシフトしたことが確認された」とし、「トランプ大統領が追加関税に向けて行動する公算は大きいが、詳細は最終決定しているわけではない。来週にかけて、変更点が多くなるだろう」とも指摘した。
「アルミニウムと鉄鋼が輸入に占める割合は2%と低く、追加関税が業界に及ぼす経済的な影響は限定的」との認識をリポートで示したのはバークレイズ。追加関税は米国内総生産(GDP)を0.1~0.2%押し下げると試算。「追加関税がコア消費者物価指数(CPI)と個人消費支出(PCE)をそれぞれ0.1%押し上げる要因になるとみるが、最終製品に反映されるのは一部で、遅行する可能性がある」とした。
BKアセット・マネジメントはリポートで「通常ならドル円は金融政策の引き締めや、強い経済指標によってアップサイドの影響を受けるが、貿易紛争(trade wars)が控えているリスクが勝っている」と指摘。その上で「ドル円が106円を割り込めば、次のメドは105円となるだろう」との見解を示した。
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