元ゴールドマン・サックス社長兼COOだったゲーリー・コーン氏が国家経済会議(NEC)委員長の職を6日に辞してからわずか1週間で、ティラーソン米国務長官が更迭される事態に発展した。オッズサイトではデービッド・シュルキン退役軍人長官の辞任観測が高まっていたが、米朝首脳会談が5月までに行われる見通しの状況下、事前交渉役となるはずの国務長官を更迭するのは極めて異例だ。
トランプ氏とティラーソン氏の関係が悪化しているのは昨年から伝わっていた。昨年6月には政治任用が遅れて職員が不足していることでホワイトハウス幹部に不満をぶちまけていた。7月には「どこにも行かない」と公言して辞任観測を自ら否定した。
しかし、米朝関係が緊迫化する中で昨年10月にはトランプ氏が「時間の浪費」と、ティラーソン国務長官が訪中して習近平国家主席と会談し、北朝鮮情勢を巡って交渉した直後にツイッター攻撃を行っていた。
そして10月4日にNBCニュースが「ティラーソン国務長官が7月に辞任を検討し、ペンス副大統領らが思いとどまらせるための会合を持った」と報道。ティラーソン氏の辞任は不可避とみられていた。イラン核合意でも、トランプ氏はティラーソン氏の方針に不満を持っていたとされる。
今回、トランプ氏はティラーソン氏の更迭に続けてマイク・ポンペオ米中央情報局(CIA)長官を指名し、ポンペオ氏の後任にはハスペルCIA副長官を昇格させると発表。上院の承認を経て初の女性長官が誕生する見込みだ。ポンペオ氏はかつて「ロシアより中国の方が脅威だ」との見解を示すなど、保守強硬派ながら中国に対して厳しい姿勢を示していた。
元エクソン・モービルのCEOでロシア人脈を買われたティラーソン氏が更迭される一方、ポンペオ氏を次期国務長官に指名したところをみると、トランプ大統領としては中間選挙に向けて「外交政策で中国をターゲットにした」(ジム・クレーマー氏、13日のCNBC発言)ことを意味する。
BMOキャピタルは13日付のリポートで、ティラーソン氏の更迭について「はるか水平線の彼方に貿易戦争が控えていることを意味し、既にガタガタしているマーケットを慌てさせている」と指摘。先行きを警戒していた。
ティラーソン氏の更迭と歩調を合わせるように、政治情報サイトのポリティコは13日、「トランプ政権が対中貿易赤字を減らそうと100品目以上に課税を検討している。年間300億ドルの輸入をターゲットにしている」と報じた。
これまでトランプ政権は知的財産権などを問題視して対中貿易赤字削減を図るとみられていたが、電化製品から通信機器、家具やおもちゃまで対象にする方針とのこと。トランプ政権が自由貿易に反するかのような姿勢を強めれば、市場に売り材料を提供する恐れがあり、続報に注意したい。
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