中国ネットサービスの騰訊控股(テンセント)が21日に2017年12月期の決算を発表する。アイテム課金などを含めて売り上げの過半を占めるゲーム事業が引き続き好調で、アナリストの間では6割を超える増益が見込まれる。ゲームでのコスト増の影響や新施策を導入した広告事業の伸びにも関心が集まりそうだ。
QUICK・ファクトセットのアナリスト予想では、17年は売上高が前の期比58%増の2401億元(約4兆円)、純利益が63%増の672億元となっている。主力のゲーム事業では社会現象になった「王者栄耀」のほか、シューティングゲームなどでもスマホ向けの配信で人気を集める。決済やクラウドといった新たな事業も好調だ。
これまで市場予想を大きく上回る増収増益を繰り返してきただけに、今回も投資家の期待は高い。株価は直近の7営業日のうち6営業日で上昇し、1月29日に付けた実質的な上場来高値(476.6香港ドル)に近い水準まで回復してきた。足元では目標株価を500香港ドル程度とするアナリストが多い。
アナリストの間で先行き期待につながっているのがウィーチャット内で動かせる様々なアプリを提供する「ミニプログラム」だ。軽いデータ容量で設計された独自のアプリをアプリストアなどからインストールせずに楽しめる。17年初に開始されると、マクドナルドから電気自動車(EV)のテスラまで幅広い海外企業がミニプログラムを投入した。いまでは58万のプログラムが提供されているという。
米ジェフリーズは「ミニプログラムによってネット通販分野が強化されており、広告や決済事業の収益化につながっていく」と予想。テンセントの目標株価を足元より1割以上高い525香港ドルに設定した。成長余地が大きいとみられてきた広告事業の伸びが注目される。
17年12月にはこのプログラムで簡単なゲームも楽しめるようにした。離れたブロックの間を跳ぶゲーム「ジャンプ ジャンプ」は投入から数週間で1日の利用者数が1億7000万人以上に達した。こうした手軽なゲームによる短期的な収益の押し上げ効果は限られそうだが、利用者がウィーチャットを使う頻度をさらに高める効果がありそうだ。
テンセントを巡っては先行きも大きなイベントが相次ぎそうだ。足元では預託証券を用いて中国本土に重複上場するハイテク企業の第1陣になるとの見方が浮上した。
市場関係者からはA株への重複上場が実現すれば「(テンセントなど中国ネット大手の)株価見直しにつながる可能性がある」(UBS証券の高挺・中国戦略ヘッド)と予想する声は多い。また音楽配信を手がける子会社の騰訊音楽娯楽集団は18年内の香港もしくはニューヨークへの上場を検討しているとされる。
もっとも足元の利益はやや伸び悩むと見込まれている。
市場では10~12月期の四半期ベースの純利益予想は前年同期比56%増の164億元となっており、7~9月期実績の180億元を下回る。競争の激しいゲーム市場でのシェア確保のため、開発や販売チャネルの拡充で費用が増えるとの指摘がある。株価への影響は気になるところだ。21日の決算会見には創業者の馬化騰・最高経営責任者(CEO)らが登壇する予定で、経営陣の反応にも注目が集まりそうだ。
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【日経QUICKニュース(NQN )香港 柘植康文】
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