中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)が21日発表した2017年12月期の決算は純利益が前の期比74%増の715億元(約1兆2000億円)となった。主力のゲームや広告の伸びがけん引し市場予想(672億元)を上回った。ただ売上高は市場予想に届かず、22日の香港市場で同社株は一時4.6%下落。ゲーム事業の伸びが足元で減速し、成長の鈍化が意識され始めた。
21日に香港で開いた決算記者会見には創業者の馬化騰・最高経営責任者(CEO)、ナンバー2の劉熾平総裁らが登壇した。馬CEOは株式市場で注目が集まっている中国本土への上場について「条件が整えば検討する」と語った。米フェイスブックで問題になった利用者情報の保護について劉氏は「広告主に対して鍵となる個人情報を提供することはない」などと述べた。主なやりとりは以下の通り。
――中国政府が解禁を検討しているCDR(中国預託証券)を利用した本土上場の考えはありますか。
馬氏「CDRは最近のホットなトピックだ。政策面での可能性や技術的な要因を考慮したうえで、条件が整えば検討したい」
――音楽配信の騰訊音楽娯楽集団など子会社を上場させる可能性は。
劉氏「騰訊音楽娯楽集団は上場候補として考えているが、完全子会社ではないため関係者間での調整が終わるまで待つ必要がある。他の完全子会社については現在、上場を検討していない。上場先として中国もしくは海外のどちらを選ぶかは事業の特性に沿って考えていく。現在約600社に出資しており、そのなかには上場を検討している企業もある」
――主力のゲーム事業は四半期ベースでは減収となりましたが、先行きをどうみていますか。
劉氏「ゲームの先行きについてはとても楽観的だ。短期的な収益化よりも、1日当たりの利用者数や有料利用者数の増加に注力している。最近でもレーシングゲーム『QQスピード』など内製したゲームや(昨年11月に中国での運営権を取得した)人気バトルゲーム『PUBG』が好調で今年前半から収益に貢献する」
――中国では子供のゲーム中毒への批判もあります。
馬氏「未成年者の保護は重要な課題ととらえており、昨年も主力ゲームで12歳以下の1日の利用時間を1時間に制限するなどの規制を設けた。保護者たちと話し合いの場を持っており、政府の関係部署とも連携して対策を講じていく。業界のリーダーとして高い基準に従う必要がある」
――電子商取引のアリババ集団との小売業界での競争についてどのように考えていますか。
馬氏「我々は小売業者になりたいわけではなく、ビッグデータやクラウドなどの公共的なサービスを提供して小売業者を技術的に支援していきたい。他社と競争があるのは健全で、良いことだ。モバイル決済は両社がお互いに競い合うことで中国で急速に広がった」
――米フェイスブックの保有する会員情報が不正に外部に流出した事案が問題となっています。個人情報の保護についてどうとらえていますか。
劉氏「プライバシーの確保は我々が最も注意を払っている事項だ。広告主に対して鍵となる個人情報を提供することはない。対話アプリでのやり取りを会社側でコピーしたりもしていない。中国をはじめとする各国の法律に沿って対応するのは当然のことだ」
【日経QUICKニュース(NQN )香港 林千夏、柘植康文】
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