米国の有力ハイテク企業の頭文字をつなげた「FANG」の中国版といえるのが「BATJ(バットジェイ)」だ。百度(バイドゥ)、アリババ集団、騰訊控股(テンセント)、京東集団(JDドットコム)という中国の代表的ネット企業4社の英語表記の頭文字をつなげて海外の投資家はこう呼ぶ。米国や香港に上場する「BATJ」が、中国本土の上海・深セン市場への上場を模索している。
中国メディアの財新などは「BATJ」を含む海外上場の8社が、預託証券を発行して上海あるいは深センに重複上場を検討していると報じた。残りの4社として候補に挙がっているのは旅行予約サイトの携程旅行網(シートリップ)、中国版ツイッターの微博(ウェイボ)、ポータルサイトの網易(ネットイース)、光学レンズの舜宇光学科技だ。
受け入れ側となる中国当局はネット企業の呼び込みに環境整備を進めている。今年後半にも中国預託証券(CDR)に関するガイドラインを設け、証券監督委員会(証監会)は年末にかけてCDR上場申請の受け付けを始めるとの観測が出ている。
「BATJ」は、大規模な資金調達が可能で国際的なブランド力向上のメリットもあることから、ニューヨークや香港に上場している。中国本土への上場は、審査期間が長いことも彼らが敬遠してきた一因だ。だが、中国では市場活性化に有力企業の誘致が課題になってきた。
この1年間、上海株式相場は横ばいだが米国や香港に上場するBATJは大幅に上昇している
上海の市場関係者は「ネット関連などニューエコノミー企業の誘致へ当局のムードが変わってきた」(東洋証券上海代表処の黄永錫代表)と期待を寄せる。今年に入ってからは、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のハイテク企業、フォックスコン・インダストリアル・インターネット(FII)の上場の手続きが異例の速さで進んでいる。株式市場では、先端技術に関連する有力企業の上場審査を優先させる姿勢と受け止められている。
百度の李彦宏董事長兼最高経営責任者(CEO)は「本土市場への上場を夢見てきた」と表明した。審査期間の長さなどの障壁がなくなれば本土上場に前向きな企業は多いとみられ、今年中に香港への上場が見込まれる中国スマートフォン大手の小米(シャオミ)も、中国本土への重複上場をうかがっているとされる。
中国当局にとって、有力ネット企業の誘致は急速に広がるネットサービスに規制の網をかけやすくなるという狙いもあるかもしれない。とはいえ、高い成長性や知名度を誇るネット大手の上場が実現すれば株式市場の活性化につながるのは間違いなさそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN)香港=柘植康文】
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