国際商品市場で原油相場が騰勢を強めている。米国とサウジアラビアによる「イラン包囲網」の強化で原油供給が細るとの観測から買いが増えており、中東と地理的に近い北海ブレント先物は前週末に1バレル70.57ドルと節目の70ドルを突破し、約2カ月ぶりの高値をつけた。イラン情勢に改善の兆しは見えず、市場参加者の間では一段高を見込む声が増えている。
ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されるWTI原油先物も日本時間26日朝方の時間外取引で66.55ドルまで上昇し、2014年12月以来の高値更新が目前に迫る。
相場上昇が加速したのは前週のこと。19日にサウジのジュベイル外相が、イランが米欧など6カ国と2015年に結んだ核合意について「不完全だ」との見解を表明。翌20日にトランプ米大統領がサウジのムハンマド皇太子と会談すると、市場では「米国とサウジは対イランの強硬姿勢を確認し合った」との観測が広がり、相場急伸につながった。
時期を同じくしてトランプ大統領はティラーソン国務長官、マクマスター大統領補佐官と、米政権の中枢ポストを次々と解任した。後任はいずれも対イラン強硬派が就く見通しだ。独コメルツ銀行は23日付のリポートで、米政府が議会に対イラン制裁再開の是非を報告する次の期限となる5月12日に「(米政府が)制裁を再開する可能性が高い」との見方を示す。
制裁が再開すれば「イランと原油取引をする国々は米国での経済活動を制限され、イランとの原油取引の中断も余儀なくされる」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミスト)。市場に出てくるイラン産原油は減少する可能性が高い。そうでなくてもイランは国内の情勢悪化で原油生産が細りつつある。原油の供給不足が表面化しそうだ。
それだけではない。サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は前週、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどほかの産油国による協調減産について「2019年も続ける必要がある」と言及。国営石油会社サウジアラムコの上場を19年に控えて「原油相場を高値で維持したいとの思惑がある」(フジトミの斎藤和彦チーフアナリスト)ため、リップサービスも盛んだ。短期的には原油相場に上昇圧力がかかりやすく、「WTIで70ドルへの上昇も現実味を帯びてきた」と石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神氏は話す。
米国のシェールオイル増産などを踏まえて「年央までには60ドルに下落する」との予想も出るが、先高観はそう簡単に収まりそうもない。イランは過去に、米欧などの経済制裁に反発して原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡の封鎖を示唆したことがあり、今回もそのカードをちらつかせる可能性は十分ある。原油相場はイラン情勢の泥沼化を織り込み始めていると見ておいた方がよいかもしれない。
【日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥】
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