新年度入りした外国為替市場で「4月は円高になりやすい」との経験則が改めて意識されている。日銀が2日に発表した3月調査の企業短期経済観測調査(短観)で、大企業・製造業による2018年度の収益計画の前提とする想定為替レートが1ドル=109円66銭と昨年12月調査時点での17年度下半期と同じ水準だったためだ。現在の106円台との乖離(かいり)は大きく今後、円の手当てを急ぐ国内輸出企業の買いが相場上昇を誘いかねない。
「4月の円高」は主に国内要因で起こる。生命保険会社や銀行は「稟議(りんぎ)社会」で、新年度入りしたからといってすぐに外債運用を増やせるわけではない。一方、製造業を中心とする輸出企業は5月の大型連休を待たず、4月に前倒しで先物の円買い予約や円・コール(買う権利)オプションの購入を進める傾向にある。需給はおのずと円買いに傾きやすくなる。
そんななかで、日銀短観によると大企業・製造業は18年度の想定レートを17年度の下期から変えなかったのが明らかになった。三井住友銀行の宇野大介・チーフストラテジストは「3月以降の円高は一過性のものと判断したのかもしれないが、見通しが甘いと思う」と手厳しい。
米通商政策や朝鮮半島情勢への懸念はここにきて緩んでいるが、消えたわけではない。折に触れて投資家心理を冷やし、代表的な対外債権国の通貨でリスクマネーの収縮局面で買われやすい円の相場上昇予想が市場には残る。
6月にかけて、今の円高・ドル安基調が変わらなければどうなるか。「企業は次回6月の日銀短観で想定レートを円高にシフトさせざるを得ない」(浜銀総合研究所の遠藤裕基副主任研究員)。為替の想定で後手に回れば収益計画を下振れさせ、株安につながれば国内投資家の体力を奪ってしまう。国内での円の需給がますます引き締まり、一層円安には振れにくくなる。
クレディ・アグリコル銀行東京支店の斎藤裕司外国為替部長も「4月の円高」を見込む一人だ。「第1週の今週こそ円安・ドル高に振れる余地があるものの、その後はじりじりと円が買われ、1ドル=105円を再び目指す」と話していた。
【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 今 晶】
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