外国為替市場で南アフリカの通貨ランドの上値が重い。2月に大統領が交代し、政治の先行き不透明感はいったん払拭された。ラマポーザ新大統領は内閣改造で市場に信認の厚い人物を入閣させるなど一見、買い材料は増えている。それでも経済立て直しが本当に進むかは未知数な面があり、投資資金の一段の流入を阻んでいる。
日本時間4日午前の外為市場でランドの対円相場は1ランド=9円前後で推移している。ズマ前大統領の辞任を受け、2月下旬には9円台前半まで上昇していたが、その後は9円前後でのもみ合いが続いている。対ドルでも1ドル=11ランド台で動きが乏しく、10ランド台を試す気配は今のところない。
【ランドの対円相場】
南アでは2月の大統領辞任後、2018年度の予算で、これまで据え置かれてきた付加価値税(VAT)を従来の14%から4月以降は15%に引き上げることを決定。財政再建の方針を明確にした。新大統領のもとで実施した内閣改造では、緊縮財政を主張し、ズマ前大統領に更迭されたネネ氏が財務相に復帰した。「ネネ氏が更迭された当時ランドは大きく売られた」(野村証券の中島将行・外国為替アナリスト)だけに、財政再建への期待はランドの支援材料になりそうだ。
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは3月23日、長期債務格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げた。現在の格付けで、投資適格で最低水準となる「Baa3(トリプルBマイナスに相当)」がさらに引き下げられ、ジャンク債となる可能性は今回の見通し引き上げで遠のいた。
問題は政策の実現性だ。第一生命経済研究所の西浜徹・主席エコノミストは「ラマポーザ大統領の政権運営が順調にいくかを投資家は懐疑的に見ているのではないか」と分析する。大統領は変わったものの、与党アフリカ民族会議(ANC)には依然としてズマ前大統領に近い「抵抗勢力」が残っている。
市場では「2019年中に予定される国民議会(下院)総選挙でズマ前大統領派を一掃しない限り、ランドの本格上昇は見込めない」(第一生命研の西浜氏)との声が多い。大統領交代で薄日が差したランドだが、自力での上昇には高いハードルがある。18年に上値を伸ばすためには、ドル安や円安といった「敵失」を待つしかなさそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一】
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