日経QUICKニュース(NQN)=南毅
毎月分配型投資信託で、2019年に入り分配金を引き下げる動きが相次いでいる。1~6月の分配金合計を昨年7~12月と比べたところ、合計額が増えたのは1本のみだったのに対し、減った投信は51本に達した。世界的な金利低下や円高傾向による純資産の伸び鈍化で分配金引き下げを迫られた。
日興リサーチセンター(東京・江東)のデータをもとに集計した。異なるコースも1本ずつ数えた。対象は、約1350本ある毎月分配型のうち、6月末の純資産額が100億円以上のファンド351本。全体のおよそ4分の1にあたる。
分配金(1万口あたり・税引き前で期間中の合計)で最も減少率が大きかったのは日本を含むグローバル株式に投資する「日興レジェンド・イーグル・ファンド(毎月決算コース)」(アムンディアセットマネジメント)。1月に分配金50円(1万口あたり・税引き前、以下同)から10円に引き下げた。18年8月に100円から50円に引き下げたばかりだった。
新興国の通貨安を理由に分配金を下げた投信も目立つ。「三菱UFJ 新興国債券ファンド 通貨選択シリーズ<ブラジルレアルコース>(毎月分配型)」(三菱UFJ国際投信)。1月に分配金を1万口30円から15円に引き下げた。18年の1年間で17%も円高・ブラジルレアル安が進み、円ベースで見た資産が伸び悩んだ。同ファンドの豪ドルについても、同時に分配金を引き下げた。
豪ドル債で運用する投信も引き下げが目立つ。オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は政策金利を過去最低の水準に下げており、金利収入が細っている。「短期豪ドル債オープン(毎月分配型)」(三井住友DSアセットマネジメント)は2月に20円から10円、「三井住友・豪ドル債ファンド」(同)は1月に40円から25円にそれぞれ下げた。
唯一、分配金を引き上げたのは「ダイワ米国リート・プラス(毎月分配型)為替ヘッジなし」(大和証券投資信託委託)だ。4月に100円から110円に引き上げた。運用対象である米国のREIT(不動産投資信託)の相場が上昇。米利上げ政策の転換で金利上昇が一服するなか、資金が米REITに流れ込んだ影響を受けた。
現状について日興リサーチセンターの藤原崇幸主任研究員は「最近の毎月分配型投信は一定の分配金額に固執せず、長期的な資産成長を見越した分配金政策を実施する傾向が鮮明だ」と指摘する。今後の見通しについて「世界的な金利低下で金利収入が減れば、分配金が減る可能性はある」としている。毎月の分配金収入に依存していた個人の家計は、運用手段の切り替えも視野に入れる必要がありそうだ。
一方、毎月分配型以外の投信は近年、値上がり益重視のものが多く、分配金が増えている、減っているという傾向は特にないという。