国際商品相場の上昇が加速している。市場では「長期の上昇トレンドに入りそうだ」との見方も増えてきた。影響は物価上昇率にとどまらず、投資マネーの流れを変える可能性がある。
国際商品の総合的な値動きを示すロイター・コアコモディティーCRB指数が18日、202.97と2015年7月以来の高水準を付けた。19日の取引時間中も参考値ながら一時204ちょうどに接近。節目とされてきた195前後を突破し、バンクオブアメリカ・メリルリンチは「長期の強気トレンド入りを宣言できるかの局面が来た」とみている。
けん引役が原油先物だ。米市場の指標となるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油は19日、一時3年4カ月ぶりの高値を付けた。サウジアラビア主導の協調減産が続くなか、世界景気の拡大継続で需要は旺盛だ。米国のシェール増産は警戒要因だが、既に「新たな大相場」(プライス・フューチャーズ・グループのフィル・フリン氏)に入ったとの見方がある。
米国を発端とした貿易摩擦への警戒から、アルミニウムやパラジウム、ニッケルといった産業・工業用金属も最近、軒並み数年来の高値を付けた。米ブルームバーグのインダストリアル・メタルズ指数は約3年8カ月ぶりの高水準。世界各地で地政学リスクがくすぶるうえ、外国為替市場ではドルの上値が重いとあって、金など貴金属にも資金が流入しやすい状況だ。
このまま商品相場は一方的に上昇するのか。バンカメ・メリルがカギとみるのが農産物だ。CRB指数の3割強を占めるが、直近は中国による米国産大豆とトウモロコシへの報復関税などが警戒され、軟調な場面が目立った。
独コメルツバンクは、農産物について「アルゼンチンなどでの大豆不作や、悪天候による米トウモロコシの作付けの遅れといった供給面の支えがある」と指摘する。そもそも中国が穀物の調達先を米国以外にシフトすれば「日欧やアジアなどほかの消費地域が買い手として現れる」との見方が専門家の間では優勢という。
米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、中国の報復関税発表後も投機筋による大豆やトウモロコシ先物の買い持ち高はほとんど減っていない。農作物が国際商品の強気相場入りを後押しする可能性は十分にあると言えそうだ。
もともとコモディティーは「景気拡大の後半にインフレヘッジ目的などの買いが入りやすい」(米株トレーダー)。昨年末には米債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏が「2018年の最高の投資アイデア」として、商品をポートフォリオに加えるよう投資家に推奨していた。
米株式などと比べて割安感もあるだけに「リスク分散の買いが強まり始めた」(米債券アナリスト)との声もある。この先も積極的な買いに支えられて「スーパーサイクルが始まった」との認識が広がれば、投資マネーのポートフォリオに商品が大きなウエートを占めてくることも考えられる。
【日経QUICKニュース(NQN)ニューヨーク 森田理恵】
※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。