日本国債の変動率(ボラティリティー)が落ちている。米国株のVIX(変動性指数)の日本国債版にあたり、日本取引所グループ(8697)などが算出する「S&P/JPX日本国債VIX指数」が、過去最低水準で推移する。前週からじりじりと下がり続け、19日時点で1.21%になった。20日はやや戻したが、日銀が10年を中心に金利水準を抑える政策を継続しているため、市場では「VIXの低下傾向は今後も変わらない」と冷静に受け止めている。
日本国債VIXは市場が今後30日間の長期国債先物のボラティリティーを年率換算でどうみているかを示す指標だ。「リーマン・ショック」直後の2008年10月には10%を超えたこともあった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニア・マーケットエコノミストは「日銀の金融緩和継続の見通しがまったく変わらないため、VIXは上がりようがない」と話す。日銀による大規模な国債買い入れで市中に出回る債券は枯渇し、流通市場ではほとんど商いが成立しなくなっている。薄商いを狙った投機的な売り買いも、モノがなければ成り立たない。
業者間の売買を仲介する日本相互証券で、日銀が長期金利の操作目標とする10年債の取引が成立しなかった日は、この1カ月間で4日に達した。17年通期でも取引不成立は2日にとどまっていた。18日の債券市場では、先物中心限月9月物の日中(立会内)の売買高が1兆円を割り、17年8月以来の低さになった。
動かないから参加者が減り、参加者減による市場縮小がさらに変動率を押し下げる――。そんな悪循環が債券市場で一段と深まっている。日本国債VIXがゼロ%台に突入する日はそう遠くないだろう。
【日経QUICKニュース(NQN ) 荒木望】
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