日銀が30~31日の金融政策決定会合で大規模緩和の副作用に配慮した政策修正を決めるのではないかとの思惑を背景に、株式市場では先週以降、地方銀行株の上昇が目立つ。固定利回りで国債を無制限に買い入れる指し値オペの水準引き上げによる長期金利の上昇や、上場投資信託(ETF)の配分見直しなど市場でささやかれる措置が現実となれば地銀が恩恵を受けやすいと考えられている。
そんな中で日銀は前週末の27日、地銀をテーマにまとめたワーキングペーパーを発表した。今回のペーパーでは、海外投資家の存在が高まったことによる副作用を示唆している。
「株主構成の変化が地域銀行に与える影響」と題したペーパーは、地銀について「近年の外国機関投資家比率の上昇は配当支払いの積極化を促す方向に作用している」と分析した。「日銀ワーキングペーパー」は日銀の公式見解を示すものではないが、海外勢のプレッシャーが地銀に無理をさせ、様々な悪影響を及ぼしているとの認識は国内投資家の間には強い。
外国機関投資家による地銀株の所有割合は平均で2010年度(7%)から16年度には12%まで上昇したという。企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)の導入もあり、金融機関や取引先同士の持ち合い解消が進んだためだ。
その配当原資については「有価証券の益出しによって捻出する傾向がみられる」と指摘。無理な益出しと配当を継続していけば、「ストレス耐性に悪影響が及びかねない」と経営体力へのマイナス影響を示唆していた。実際、日銀のマイナス金利導入直後は債券高の恩恵を受けて利益を出せていたが、その後はなかなか安定的な収益源を見いだせなくなっているだけに、市場では「日銀ペーパーは日銀内で何らかの地銀対策が話し合われている可能性を示唆するのではないか」とのうがった見方もある。
26日付日本経済新聞は「日銀は金融政策決定会合で年6兆円買っている上場投資信託(ETF)の購入配分の見直しを検討する」と報じた。東証株価指数(TOPIX)連動型ETFなどを増やし、日経平均株価連動型ETFの購入額を減らす方向で議論する案があるようだ。TOPIX連動型が引き上げられれば「中小型で、流動性の低い地銀株にはプラス」(SMBC日興証券の伊藤桂一チーフクオンツアナリスト)との声は多い。
〔日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一〕