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取引に厚み、個人と海外勢の需要つかむ (特集:日経平均先物30周年)2

取引開始から30周年を迎える日経平均先物。特集の2回目は、経済環境の変化や制度面の充実など、世界でも有数のデリバティブ商品に発展するまでの道のりを紹介する。

1988年9月3日の日経平均先物市場開設の様子(大阪取引所提供)

 

■バブル崩壊後は低迷、アベノミクス相場で増加に拍車

1988年(昭和63年)に取引が始まった日経平均先物は、バブル崩壊後は売買代金が低迷していたが、2000年代に入ると日本株の好調さと歩調を合わせて増加傾向にある。リーマン・ショックが起こる1年前の2007年には年間の日経平均先物の売買代金が初めて500兆円を突破。日経平均ミニ先物やその他の先物関連を含めると15年には1400兆円に迫る状況となった。

日経平均先物の売買代金が増加している背景として、取引時間の延長や日本株が堅調なことに加え、高頻度取引(HFT)の影響が指摘されている。10年1月に東京証券取引所が東証次世代システム「arrowhead(アローヘッド)」を導入したのに続き、大阪取引所(OSE)は11年2月に新しいデリバティブ取引システムの「J-GATE」を導入した。J-GATE導入後、欧州系証券や米系証券の経由の短期売買が手口の上位を占め、商品投資顧問(CTA)などとみられる商いが活発で流動性が増している。

特に13年以降は日経平均先物、日経225ミニ先物を合わせると年間800兆~1000兆円前後で高止まりしている。12年12月に第二次安倍内閣が発足して始まったアベノミクス相場で株高の流れが強まる中、13年3月に黒田東彦元財務官が日銀総裁に就任して量的・質的金融緩和を導入した。政策的な後押しにより株高基調が定着したことが日経平均先物の商い増加に直結している。

■ミニ先物が登場、個人や裁定取引などに裾野広がる

日経225ミニ先物の取引の開始(06年7月18日)は、投資家層の広がりを促した。日経平均先物(ラージ)の取引単位は日経平均株価の100倍のため、日経平均が2万2000円の時は220万円が最低取引単位(1枚)となるが、ミニ先物は10分の1の22万円が最低取引単位となる。取引単位と証拠金がラージの10分の1となるため、個人投資家が利用しやすくなった。また呼値がラージの10円に対し、ミニは5円と細かいため機動的な売買に向いている。さらに限月もラージの3カ月ごとに対してミニ先物は毎月存在するため、先物と現物の裁定取引を行う機関投資家の利用も多い。

ラージとミニを合計した売買代金ベースの年間取引シェアを見ると、17年に個人は13.6%となり、海外投資家(72.9%)に次ぐ2位。ミニだけなら19.6%のシェアとなっており、小口化で個人の普及に弾みがついたことが分かる。

■夜間取引の時間拡大でさらに活況

1990年代後半、日本は大手銀行や証券などの経営破綻が相次ぐ金融不況の真っ只中にあった。ある投資家が「あの銀行は助かるのか」と心配になり、深夜に部下をその銀行の本店に向かわせたところ、帰ってきた部下は「夜なのに煌々と明かりが灯っていました」と報告した。経営破綻を避けようと深夜まで職員たちが対応にあたっていたのだろう。金融危機が深刻になれば翌日の東京株式市場はショックに見舞われると判断し、その投資家は急いでシカゴ市場で日経平均先物を売り、難を逃れたという。

日経平均先物は今でこそ日中、夜間で取引が行えるが、開始直後は日中取引だけだった。夕方からのイブニング・セッションが始まったのは2007年9月で、その後に段階的に時間が延長され、今のように翌朝5時30分まで取引できるようになったのは16年7月からである。前述した投資家も、OSEの夜間取引が1990年代に朝方まで延長されていればわざわざシカゴ市場に注文を出さなくて済んだはずである。

夜間取引には大きなメリットが2つある。1つ目は米国時間の経済統計やイベントなどの動きを踏まえて国内の投資家が夜間に取引できること。2つ目は海外投資家が母国市場の取引時間中にOSEの日経平均先物に注文を出せることである。東京市場の休日対応などの課題は残るが、取引時間はほぼ24時間対応となって利便性が増してきた。

■3市場に上場する珍しい先物、OSEのシェアは7割

日経平均先物は、日経平均株価という1つの株価指数に対して複数のライセンスが与えられた珍しい先物だ。最も早く取引が始まったのはシンガポール国際金融取引所(SIMEX、現在のシンガポール取引所=SGX)で1986年9月。英ベアリング銀行の経営破綻を題材にした映画「マネートレーダー銀行崩壊」(99年公開)で、派手な半被を着た主人公のトレーダーがシンガポールで取引していたのは日経平均先物である。その後の88年9月に大阪証券取引所(当時)、そして90年9月にシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)と、3つの取引所に上場して現在に至っている。

CMEとSGX(当時SIMEX)は84年に相互決済制度(MOS)を締結した。現在、SGXで取引した日経平均先物はCMEでも取引が可能となり(逆も可)、日経平均先物の利便性は一段と高まった。その一方、OSEも時間延長などで海外投資家の取引ニーズに応えており、OSEによるラージ換算での日経平均先物の売買シェアは約7割と高水準を維持している。

ラージ・ミニといった商品の種類、取引時間などで、OSEの競争力は他の取引所と比べても遜色ない。日本経済が発展し、日経平均も上昇基調が続けば日経平均先物への国際的な需要は高まる。OSEの日経平均先物の取引状況が映し出すのは、文字通り日本株の魅力そのものである。

=続く

(片平正二)

(特集:日経平均先物30周年)1 大阪発祥、息づくコメ先物のDNA

(特集:日経平均先物30周年)3 大取社長「国内勢シェア拡大、息長く取り組む」

※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。


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