株式市場では日経平均2万2500円近辺の攻防が続いている。米中貿易問題や新興国の通貨安などに加え、相次ぐ自然災害にも見舞われて何となく上値が重いが、大きな値下がりを警戒する声は少ない。日本株の先行きを左右する米国株式市場に、持続的な上昇を示唆するチャートが多いためだ。
1つは、61.3と2004年5月以来の高水準を記録した8月の米ISM製造業景況指数だ。東海東京調査センターによると、過去2回の景気後退局面では、ISM指数が50を割るタイミングでS&P指数が高値を付け、その後に急落した。ISM指数がピークを付け、50を割り込むまでにかかった月日は約1年半。つまり、いまがISM指数のピークだとしても、向こう1年半ほどは米株高が持続するという見立てだ。
米ISM製造業景況感指数(グラフ青)とS&P500種株価指数(グラフ緑)
(QUICK FactSet Workstationより。網掛けは景気後退期)
この動きは米国だけの話にとどまらない。ISM指数にやや遅れながらも、日本の電機株も似たチャートを描きやすい。電機株の時価総額は、東証1部全体の1割強を占める。電機株の上昇が株式相場に好影響をもたらすことは、想像に難くない。
2つ目は米国株の需給要因だ。米商務省によると、2017年末に成立した税制改革法によって、海外の関連会社で稼いだお金を自国に戻す大規模な資金還流の動きがみられた。 18年1~3月期で3000億ドルと、同様のレパトリ減税が行われたブッシュ政権時の05年を遥かに上回る規模だ。
こうした資金は、企業の自社株買いやM&A(買収・合併)などの原資になるとみられており、株式相場を支える要因になる。
米多国籍企業における海外関連会社からの配当金などの受取額の推移
(四半期ベース、米商務省)
そして3つ目が、米景気の先行きを映す鏡といわれる米ダウ輸送株指数の動き。ネット企業が隆盛を極める今の米国株式市場にあって必ずしも相場全体の先行きを示す指数とはいえないが、東証株価指数(TOPIX)と並べてみると、TOPIXがやや遅れつつ、ダウ輸送株指数の動きに追随していることがわかる。米ダウ輸送株指数は足元で水準を切り上げており、遠からずTOPIXもキャッチアップする可能性がある。
米ダウ輸送株指数(グラフ青)とTOPIX(グラフ赤)
ハイテク株への集中物色で上昇してきた米株式相場だけに、ハイテク株安となった5日の米国株の動きは気になるところだ。とはいえ、米株高の材料は、ほかにもたくさんある。いまひとつ盛り上がりに欠ける日本株市場だが「しっかり押し目を拾う」スタンスが、”当面は”正解なのかもしれない。(松下隆介)
※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。