逆張り思考の強い個人投資家は相場の下げ局面では貴重な買い支え役だが、長期の目線で考えると日本株の売り要因になりかねない。高齢化による株式の売却がその理由だ。野村証券が「個人投資家が日本株を売る理由」と題したリポートで分析している。
「高齢化の進行による売り圧力は資産形成を意図した政策効果を上回る」――松浦寿雄チーフストラテジストらは、相続される上場株式の合計額は年間約2.5兆円で、そのうち8割が売却されると年2兆円の売り圧力になるとそろばんをはじく。
資産形成を意図した政策効果として少額投資非課税制度(NISA)を通じて17年は0.4兆円ほどの日本株への資金流入があったと指摘。こうした資産形成効果が多少なりとも売り圧力を和らげるが、19年にかけても売り圧力が強まりかねないという。
富裕層向けに投資セミナーを開く国内銀行のある担当者は「結局のところ資産を受けつぐ予定の次代の投資家教育がカギとなる」と話す。とはいえ、その投資教育は遅れ気味ともいう。
野村証券の松浦氏らは売り圧力の影響を受けそうなのは「高配当利回り銘柄」と指摘する。魅力的に映る高配当利回り銘柄をこれまで重視する向きが強かったからこそ、高齢化の進展に伴って売りが強まる可能性がある。リポート内では「企業側も株主の年齢を考慮した対策が必要となってくるかもしれない」とも指摘した。
一部ファンドの説明会では年齢層の若い投資家が数多くみられる一方、多くの投資説明会では未だに投資家の年齢層が高い状況が目立っている。証券界にとって高齢化という逆風をどう乗り越えるかは大きな課題といえよう。(中山桂一)
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