日本テクニカルアナリスト協会での講演のために来日したシステムトレードの先駆者ペリー・カウフマン氏は20日、QUICKのインタビューに応じた。世界的な株式相場の下落を受けて日経平均株価も大きく値下がりしているが、カウフマン氏は「日米の株式相場は長期的にみて上昇トレンドが続いている。ここ数日の下げに惑わされてポジションを変えてしまうようでは、利益を得ることはできない」と説いた。インタビューの主な内容は以下の通り。
――日本や米国の株式相場が急落しました。今後の見通しはどうでしょうか。
「トレンドフォローは、大きな経済の動きに沿うように投資をする。目標とする株価水準なども決めない。ここ1週間ほどの相場下落は予想できなかったが、2008年のリーマン・ショック以降、米経済は好調だ。日本や米国の株式相場は上昇トレンドを続けている。これからも続くだろう。株価が上がり続ける限りは、ロングし続けるのがよい」
「短期的に見ると、さまざまなニュースやノイズでマーケットが大きく動いている。だが、株価は長い目で見て上昇トレンドが続いている。ここ数日の下げに惑わされてポジションを大きく変えてしまうようでは、絶対に利益を得ることはできないだろう」
「米国株式相場は大きく下げているが、1~2月にかけての下げよりも小さい。長期的な上昇傾向は依然として続いている。ただ、FAANGのようなハイテク株は売り、より安全な銘柄に切り替えるべきだろう。株式相場がセルオフの状況でも、業績がよく市場をアウトパフォームしている銘柄はまだある」
「ボラティリティの上昇には注意すべきだろう。ボラティリティが上昇するときは価格の大きな変動がともない、世界でリスクが高まる可能性がある。ボラティリティが高いときに利益を得ようとすると、もうけが小さい割に抱えるリスクが大きくなる。そのため、ボラティリティが高まる局面では、新規に投資しないように決めている」
――株価などのトレンドを見る場合、どの程度の期間で分析していますか。
「1つではない。たとえば、30日、60日、180日など期間の異なるトレンドを等しく見て判断している。複数のトレンドがいろいろな方向を見ていてトレンドが出にくいときや、トレンドが変化する場合にはポジションを小さくする。コンピューターで判断するので、多くても問題ない」
――テクニカル分析で重視している指標は何でしょうか。
「(相場の勢いを表す)モメンタムの指標を利用している。たとえば、(過去の高値、安値に対しいまの株価がどの位置にあるのかを指数化した)ストキャスティクスは、いまの株価の居所をタイムラグなく教えてくれる。RSI(相対力指数、売られすぎや買われすぎを判断する)やMACD(違う期間の2つの移動平均を使った指標)などはラグがある」
――どんな資産に投資していますか。
「米国株や先物がメーンだ。FX(外国為替証拠金取引)や米国債、株価指数、金属、農産物、エネルギーなどさまざまな資産が対象だが、流動性が低い新興国株などは手がけない。日経平均株価やTOPIXの株価指数先物も売買する」
――投資に重要なことはなんでしょうか。
「長期投資家にとって、投資する際にいちばん重要なのは時間分散だ。必要な量を分散して購入すれば、購入単価がならされる。一度に大量に投資するよりも、トレンドが変わったときに損失もならすことができ、トレンドが戻ったときに新しいポジションを再度つくりやすくなる」
聞き手:QUICK 松下隆介
ペリー・カウフマン氏
カウフマン・アナリティクス(バハマ)マネージング・ディレクター。金融エンジニアとして、世界の株式や先物でアルゴリズムを駆使したシステムトレードを手がける。航空宇宙産業で「ロケットサイエンティスト」としてキャリアをスタートさせ、NASAの有人宇宙飛行計画「ジェミニ計画」に携わった経験もある。
※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。