先週末の米国市場ではダウ平均株価をはじめとした主要3指数が大幅に下落、投資家の不安度を測る指標とされる恐怖指数(VIX)は9.62%高の23.23で大幅に3日続伸した。終値ベースで10月30日以来、1カ月半ぶりの高水準に達した。金利低下・ボラティリティー(変動率)の上昇を受けて、様々な資産価格の変動率に応じて資産配分を調整する「リスクパリティー」型ファンドの先物売りが警戒されそう。「株式市場で恐怖指数が上昇し、トランプの狂気が乗り移ったのでしょうか。クリスマスラリーは、今年は期待できないでしょうか」(個人投資家)との声が出ていた。
■日米欧のVIX指数の年初来チャート
7日、ナバロ大統領補佐官が、設定した90日の期限内に通商協議で合意できなかった場合に中国製品への関税を引き上げると述べたと伝わった。「米中休戦」の期待が浮上してきたなかで、カナダが米国の要請に基づいて中国・華為技術(ファーウェイ)幹部を逮捕。中国が批判を強めていることも相場の重しだ。
共産党機関紙の人民日報は9日付で、幹部の罪が確定していないのに「手錠をかけ、足かせをつけた」と指摘。「過ちを正し、中国国民の権利侵害を直ちに止めなければ、重い代償を払うことになる」と強調したという。ファーウェイの孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)の身柄が釈放されるかどうかが注目される。
ノムラセキュリティーズは7日付のリポートで、「この逮捕は、貿易や構造経済政策を超え、国家安全保障などの外交政策のイニシアティブを含む分野で米中の緊張が強まっていることを示している」としつつ、WSJが7日に、米当局が中国政府と関係があるハッカーに対して、間もなく刑事告発を行い、米中関係にさらなる負担をかける可能性があると報じていたことも紹介し、さらなる緊迫化にも警戒していた。
さらに、政権の要の一人ホワイトハウスのジョン・ケリー大統領首席補佐官が近く辞任する見通しとの報道も飛び出した。「FEAR恐怖の男」すなわちトランプ大統領が2020年の大統領選での再選を目指すべく人事刷新に動いているもようで、事実上の解任との見方ができる。ケリー氏は、民主的な政策決定プロセスを踏まないトランプ大統領との関係が悪化。トランプ氏の娘婿のジャレッド・クシュナー氏、長女のイバンカ・トランプ氏ら「ジャバンカ」とも関係を悪くしていたとされる。(片平正ニ)
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