株式市場のあちらこちらでリスクオンのサインが灯り始めた。
日本では、現物株の値動きが投資家のリスク許容度の高まりを示している。最初のグラフの青線は、TOPIX500の採用銘柄のうち、18日時点でベータ値が高い10社の時価総額をベータ値が低い10社で割った指数の推移だ。高ベータ(高ボラティリティー)の急激な巻き返しが読み取れる。
■日経平均(グラフ赤)の戻り基調とともに高ボラ銘柄の優位も復活(グラフ青)
グラフ青線は、TOPIX500採用銘柄のうち、ベータ値が高い10銘柄の合計時価総額をベータ値が低い10銘柄の時価総額で割った値(左軸、25日移動平均)
VIXショックによる株価急落の余韻が残りつつも株価が大幅上昇した18年3月は、低ベータ(低ボラ)銘柄がけん引役だった。株式のウエートを高めつつ、守りも固める「半身の構え」の投資といえる。一方で足元の高ベータ銘柄への資金シフトは、久しぶりに訪れた本格的なリスクオン相場に賭ける「攻めの投資」と推測できる。
米国株でも同様の動きがみられる。JPモルガンのクオンツチームは15日付けのリポートで、18年12月をピークに低ボラティリティ銘柄のパフォーマンスが高ボラティリティー銘柄を大きく下回る状況が続いており「こうした状況は継続するだろう」との見方を示している。
■米国でも低ボラ銘柄のパフォーマンス優位は終わった
リスクオンの訪れはグローバルでも見て取れる。HSBCの17日付けのリポートによると、同社が算出するグローバル株式のセンチメント指数は、1月を境に弱気から中立まで一気に上昇した。まだ本格的な強気とはいえないが、「市場予想が低すぎる」とみる企業業績の拡大や景気刺激策による中国の輸入増などに期待し、一段のセンチメントの改善を見込んでいる。
■1月を境に弱気ムード解消(HSBCのグローバル株式センチメント指数)
気がかりな点があるとすれば、日本株の戻りの鈍さだろう。円建てのS&P500種株価指数とMSCIコクサイ指数(日本を除く)のチャートに日経平均株価を10分の1にして重ねてみると、1月以降の世界的な株高局面での日本株の上昇ペースが鈍い。
■グラフ緑の日本株の上昇ペースが鈍い
S&P500種株価指数(円建て、グラフ赤・左軸)と日経平均(10分の1、グラフ緑・同)、MSCIコクサイ指数(日本を除く、円建て、グラフ青・右軸)
野村証券は15日付のリポートで、18年10~12月期(3Q)決算発表後の株価の推移を分析。例年なら3Q決算はネガティブな内容でも「悪材料出尽くし」となりやすい季節性がある。ただ「今回はボトムアウトといえるほど反発力は強くない」という。むしろ、期待先行の買いが株価を支えた銘柄は、コンセンサスの切り下がりとともに売り直される可能性があると見ている。(松下隆介)
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