通信計測機器の米キーサイト・テクノロジーズが29日発表した2019年2~4月期決算は売上高が前年同期比10%増の10億9000万ドルとなり、市場予想と会社予想をともに上回った。次世代高速通信規格「5G」向け需要が引き続き旺盛だった。決算が好感され、29日の米株市場の時間外取引で株価は8%高となる場面があった。
純利益は1億5300万ドルと前年同期の2.4倍に膨らんだ。増収効果に加え、買収関連のコストが減った。特別項目を除く1株利益は1.22ドルとQUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(0.98ドル)を大幅に上回った。受注は14%増と直前四半期の18年11月~19年1月期(5%増)から勢いが増している。
主力の通信計測機器など「通信ソリューション」部門の売上高は8%増、営業利益は42%増えた。売上高営業利益率は28%と前年同期から7ポイント上昇した。通信会社やデータセンター、携帯端末メーカーなどが5Gの実用化に向けた投資を積極化し、通信網の構築に必要な計測機器の需要が拡大している。ロン・ネルセシアン最高経営責任者(CEO)は「当社は各市場で大部分の需要を獲得した」と指摘した。
5G関連の成長期待の半面、短期的には米中摩擦の影響が懸念材料となる。5~7月期の売上高は10億1800万~10億5800万ドルを見込み、市場予想(10億6100万ドル)を下回る。キーサイト幹部は決算説明会で「米政府による華為技術(ファーウェイ)への取引規制を織り込んで、やや保守的に予想した」と述べた。
ファーウェイ以外の中国企業とも幅広く取引しており、中国売上高比率は17~18%と大きい。キーサイト幹部は「中国が落ち込んでも欧州や他のアジアでの拡大で補える」と自信をみせた。通信計測機器の次に売上高が大きい自動運転やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」向けなどの計測機器の伸びも見込めるという。
29日終値の株価は前日比2%安の71.42ドルだった。決算発表を受け、時間外取引では終値を8%上回る77ドル台まで上げる場面があった。今後1年間の利益予想に基づくPER(株価収益率)は29日終値で17倍弱と、米中摩擦が激化する前の4月下旬の22倍前後から低下している。米中摩擦の悪影響が市場の警戒に比べ小規模にとどまりそうなら、見直し買いが続く可能性もありそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN ) 古江敦子】
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