外国為替証拠金(FX)取引で、日本の個人投資家によるオーストラリア(豪)ドル買いが勢いを増している。QUICKが毎週まとめる店頭FX8社合計(週間)建玉状況で、「豪ドル・円」取引における豪ドルの買い建玉が今年最大に膨らんだ。豪ドルが節目とされた1豪ドル=75円を下回り、相場の流れに逆らって取引をする傾向にある「ミセスワタナベ」の買いを誘った。18~19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が豪ドル相場を押し上げるとの見方も意識されている。
豪ドルは前週末14日、1豪ドル=74円台半ばと1月3日以来およそ5カ月ぶりの安値を付けた。日本のFX市場では14日時点の「豪ドル・円」取引の豪ドルの買い建玉は前の週から1万7875枚増え、22万4722枚と昨年10月下旬以来の高水準となった。豪ドルの下落基調を受け「逆張り」傾向が強い個人投資家は買いを増やし、豪ドル買い比率は90%を超えた。
豪ドルの底値が近づいているとみる大和証券の石月幸雄・シニア為替ストラテジストは「(豪の代表的な輸出品である)鉄鉱石価格が回復して貿易収支は黒字基調にあり、豪ドルは悪材料が織り込まれすぎている」と話す。前週発表の5月の豪雇用統計では失業率が前月比横ばいの5.2%だったことを材料に豪ドルが売られる場面があった。石月氏は雇用者数の増加に加え、労働参加率の上昇に着目し「追加の利下げ観測は一服してくるのではないか」とみる。
岡三オンライン証券の武部力也投資情報部長は、今後の豪ドルの対円相場について「対米ドル相場の動き次第だ」と語る。19日に予定されるパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見で、利下げに積極的なハト派姿勢が強まれば、米ドルには下げ圧力がかかる。対米ドルで豪ドルが上昇すれば、豪ドルは対円でも押し上げられそうだ。
米商品先物取引委員会(CFTC)が14日発表した11日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で投機筋(非商業部門)による豪ドルの売り越し幅は小幅ながら2週連続で縮小した。ヘッジファンドなどの売りに一服感が出るなか、ミセスワタナベの買いを支えに豪ドルに下げ止まりの兆しが出ている。
【日経QUICKニュース(NQN ) 矢内純一】
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