NQNニューヨーク=古江敦子
通信計測機器の米キーサイト・テクノロジーズが21日に発表した2019年5~7月期決算は、市場予想を上回る増収増益だった。世界で次世代高速通信規格「5G」に向けた投資が一段と拡大し、米政権による中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)との取引規制の悪影響を補った。5G開発を巡る世界的な需要増は続くとみられ、長期的な成長期待が高まっている。
5~7月期の売上高は前年同期比で8%増の10億8700万ドル、純利益は32%増の1億5900万ドルだった。特別項目を除く1株利益は1.25ドルと市場予想(1.02ドル)を上回った。21日の時間外取引でキーサイト株は急伸し、一時は通常取引の終値を約8%上回った。
好業績を主導したのは主力の通信計測機器「通信ソリューション」部門だ。13%の増収となり、為替変動や買収などの影響を除いたベースでの売上高営業利益率は27.8%と前年同期比で8ポイント上昇した。通信計測機器の分野は米政府によるファーフェイへの輸出規制の影響を受けると懸念されていたが、ひとまず杞憂(きゆう)に終わった。
「中国では5G開発を巡る競争が激しさを増している。5~7月期は中国からの需要の強さが持続し、収益の支えとなった」。キーサイトのロン・ネルセシアン最高経営責任者(CEO)は決算発表後の説明会でそう説明し、市場の不安を打ち消した。
キーサイトの年間売上高でファーウェイ1社が占める割合は2018年時点で3%程度だが、今後は1~2%に縮小していくという。Fibocomなど中国企業との契約は増えているようだ。ネルセシアンCEOは「(今は収益の逆風になるとしても)長期的に悪影響は限られる」と強調した。
米中貿易摩擦や世界景気の減速など不確実性は高まっているが、キーサイトは「成長基調が長く続く」と自信をみせる。ネルセシアン氏はその背景について「世界での広範な事業展開と、5G開発を巡る(動画配信を含む通信や自動運転など)最終市場の多様化で、幅広い顧客を取り込める」と語った。
5G関連で5~7月期は半導体企業の需要が弱かった半面、通信機器関連や自動運転に絡む需要が旺盛だったようだ。地域別の売上高をみると、アジアが全体に占める割合は2~4月期の45%から42%に縮小。その分を、米州の好調が埋めた。
8~10月期の売上高と1株利益の見通しはともに市場予想を上回った。キーサイト幹部は「5G開発はまだ初期段階」との認識。今後のさらなる収益の伸びを見込む投資家は増えたようだ。