日経QUICKニュース(NQN)=川上宗馬
投資信託の手数料にあたる信託報酬率の引き下げが相次いでいる。年金運用を担う運営管理機関がインターネット上で商品情報を公開し始め、金融庁は金融商品向けの指針を策定した。情報開示が進み投資家が運用成績やコストなどを比較しやすくなり、手数料引き下げの圧力が高まっているようだ。
日興リサーチセンター(東京・江東)が2018年8月末~19年8月末の投信(ETFを除く)の信託報酬率の変化を調べたところ、同期間で報酬率を0.2ポイント以上引き下げた銘柄数は86(全体の1.6%)。「ブラックロック・ヘルスサイエンス・ファンド」(ブラックロック)は8月末時点で前年同期比0.8532ポイント低い0.9072%。「MHAMジャパンオープン」(アセットマネジメントOne)が0.648ポイント低い0.972%、「スパークス・ジャパン・オープン」(スパークス・アセット・マネジメント)が0.54ポイント低い1.4904%だった(いずれも税込み)。
9月に入ってからも「SBI・全世界株式インデックス・ファンド(雪だるま)」(SBIアセットマネジメント)が信託報酬率を引き下げたほか、「たわらノーロード先進国株式」(アセットマネジメントOne)が10月1日付の引き下げを発表した。
背景には投資家向け情報開示の体制が強まったことがある。ニッセイ基礎研究所の原田哲志准主任研究員は、金融庁が「顧客の損益状況を示す『共通KPI』の公表を求めており、各社の信託報酬率引き下げにつながった」と指摘する。また厚生労働省は7月、確定拠出年金(DC)の運用に使われる投信について、運営管理機関に対しすべての商品情報をインターネット上で公表するように求めた。「同じ指数に連動する投信の信託報酬率を個人が比較しやすくなった」(野村総合研究所の金子久上級研究員)ことも、引き下げ競争に拍車を掛けたようだ。
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