「グーグル」を傘下に抱える米アルファベットは4日、2018年10~12月期(4Q)決算を発表する。QUICK FactSet Workstationによると、1株あたり利益(EPS)のアナリスト予想は前年同期比12%増の10.88ドル、売上高は50%増の389億ドルで、インターネット広告の拡大が成長をけん引するのは間違いない。一方、広告事業以上に急成長を続けてきたクラウド事業には暗雲が垂れこめている。
【アルファベットの18年10~12月期決算の市場予想】
・売上高 :389億400万ドル(50%増)
・EPS :10.88ドル(12%増)
(予想はQUICK FactSet Workstation。1月30日時点。かっこ内は前年同期比の増減率)
「堅調な決算を予想する」(キーバンク)など市場では、4Q決算について前向きな予測が多い。稼ぎ頭は中核事業のインターネット広告。検索や動画サイト「Youtube(ユーチューブ)」といった自社サイトの広告にAdWordsなど外部のネットワーク広告を加えた、売上高の8割強を占める広告事業の売上高は、前年同期比19%ほど伸びる見通しだ。
ネット広告は急拡大で成長が続いている。米調査会社マグナによると、2018年のグローバルでの広告市場は前年比7%増の5520億ドルだった。2010年以来の高い伸びだ。とりわけデジタル広告の成長が顕著で、18年は前年比17%増の2510億ドル。検索広告(16%増)、動画(29%増)、ソーシャルメディア(33%増)の3分野が大きく成長した。広告市場の4割近くを占める米国でも、デジタル広告は隆盛を極める。
※米国の広告市場の見通し(マグナのリポートから引用)
グーグルは、2018年に新たに手軽に商品を買える仕組みと広告を組み合わせた「ショッピング・アクション」機能を導入するなど、米アマゾンに対抗すべく、ネットショッピングに絡む新しい広告の仕組みづくりにも力を注いでいる。ロバート・W・ベアードは28日付リポートで「EC市場の成長も追い風になり続けるだろう」などと指摘する。
武器はもう1つある。クラウド事業だ。QUICK FactSet Workstationによると、クラウド事業を中心とした「その他」の売上高は前年同期比37%増の64億ドルになり、ネットワーク広告(55億ドル)を上回る見通しだ。4~6月期は43%増、7~9月期は36%増など、足元では広告事業を上回る成長率を叩き出し、成長のけん引役となりつつある。
リサーチ会社カナリスによると世界のクラウド市場はアマゾン、マイクロソフト、グーグルの3社で6割近いシェアを握る。グーグルはアマゾンから大きく離された3番手に過ぎないが、成長力はアマゾン、マイクロソフトを上回る。ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズは19日付リポートで「人工知能や機械学習といった強みに加え、元オラクル幹部の最高経営責任者(CEO)起用で、収益力の拡大に期待できる」などと分析している。
※2018年6月末時点のクラウド市場のシェアと成長率(カナリスまとめ)
ただ、クラウド事業は足元で減速への懸念も強まり始めた。米インテルの18年10~12月期決算は、クラウド用データセンターの拡張一服を示唆した。独ソフトウェア大手のSAPも、18年10~12月期でクラウド製品の新規受注の伸びが鈍化した。世界シェア2位である米マイクロソフトの「アジュール」でさえ、18年10~12月期の成長率は前年同期を下回った。世界景気の先行きが不安定な中では、クラウド採用を見送る企業が出ても不思議ではない。成長分野であることは間違いないものの、かつての勢いがいったん鈍る可能性はある。
QUICK FactSet Workstationによると、カバーする44の証券会社のうち、43社が「買い」、1社が「中立」だ。株価は足元の水準を35%ほど上回る1348ドルが目標株価となっている。向こう12カ月先の予想をもとに計算した株価収益率(PER)は足元で22倍。昨年末から上昇基調が続いているとはいえ、さまざまな分野で競合するライバルのアマゾン(56倍)と比べると割安で、投資妙味を指摘する声は多い。
ただ、第二の柱であるクラウド事業の伸び悩みが明らかになった場合はどうか。アナリストの楽観論が後退し、売り材料視される可能性もある。マイクロソフトも、アジュールの伸び悩みが明らかになった30日の時間外取引で、一時売られる場面があった。
政治的な足かせにも警戒だ。フランスのデータ保護機関は21日、一般データ保護規則(GDPR)に基づきグーグルに5000万ユーロの制裁金を科した。国内でもグーグルなどに対する規制強化の議論が出始めている。「(政治リスクは)ビジネスを展開する上でのコストを投資家に意識させてしまう」との見方もある。決算では広告収入以外にも、しっかりと目配せする必要がありそうだ。(松下隆介)
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