QUICKは24日午後、東京都内で「QUICK月次調査25周年特別セミナー」を開いた。今回のテーマは「世界経済 嵐に備えよ~Fasten Your Seatbelt」。前日銀副総裁の中曽宏・大和総研理事長が基調講演し、米国で格付けの低い企業への融資を束ねて証券化したローン担保証券(CLO)の発行条件が緩くなっている状況について、2008年のリーマン・ショックの発火点となったサブプライムローン問題を想起させると指摘し、「同じになるとは思っていないが、注視が必要だ」と述べた。
中曽氏は各国中央銀行の緩和的な政策が長期化している現状を「リスクを将来に先送りすることになる」とし、混乱なく金融政策が正常化することが難しくなるとの見方を示した。米中間の貿易問題を巡っては「すぐになんらかのディール(取引)が成立するのは見通しにくく、対立の構造は続くだろう」と述べた。
日本経済の今後の課題については「外国人労働者が増加しているが、必ずしも人手不足が深刻な産業で増えているわけではない」と指摘した。国内の金融情勢をめぐっては、金利が上昇した場合の地方金融機関の収益改善度合いを分析し、「金利上昇幅が大きくなければ、収益改善は大きくならない」と述べ、金利上昇に頼らない経営努力の必要性を訴えた。
基調講演に続くパネルディスカッションでは、コモンズ投信の伊井哲朗社長兼最高運用責任者(CIO)、みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト、国際通貨研究所の武田紀久子主任研究員が「2019年のリスクオン・リスクオフ」をテーマに討議した。
上野氏は政府が24日に公表した月例経済報告での景気認識について「『回復』の文言を残したことは意外だ」と述べた。消費増税延期の可能性については「五分五分だ」とし、「月例経済報告の内容は弱く、米中の貿易問題などを見据え、どちらとも解釈できる状態でホールドした」との認識を示した。
武田氏はインフレにならない限り財政赤字の膨張は問題ないとする学説の「現代貨幣理論(MMT)」に言及しつつ、「ここまで極端な例を持ち出さなくとも、日本の財政に対して市場の一部では容認ムードも出てきているのではないか」と述べた。半面、仮に消費増税が延期になるとしても「延期の期間を長引かせないことが必要だ」との見方を語った。
伊井氏は消費増税延期の可能性について「政治的な要因だ」と述べた。その上で6月下旬に日本で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議で世界経済のリスクが高まっていることに言及するなど「G20に関連付けたものだろう」との認識を示した。日本経済新聞社の梶原誠コメンテーターがモデレーターを務めた。
QUICKは毎月、株式、債券、外国為替の担当者やアナリストたちを対象に市場の動向や投資スタンスなどを調査している。今回の特別セミナーは1994年4月に始まった株式の月次調査が25周年を迎えたのを記念して開かれ、調査の回答者など約200人の市場関係者たちが集まった。2018年の日経平均株価や10年債利回り、円相場について見事な予想を示した回答者を月次調査アワードとして表彰するとともに、長年にわたって調査に協力してくれた回答者に功労賞を贈った。
【日経QUICKニュース(NQN)】
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