QUICK資産運用研究所=小松めぐみ
老後の資金づくりに適した制度として注目される個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)。昨年10月に取り扱いを始めたKDDIグループのauアセットマネジメントは、スマートフォン(スマホ)を活用したイデコの普及に力を注ぐ。サービスの特徴や最近の取り組みなどについて、営業企画部の伊藤充淳部長に話を聞いた。
■スマホで年金管理
――auアセットマネジメントのイデコのセールスポイントは。
「スマホ1つで年金の管理ができる『auのiDeCo』アプリを提供している。運用商品は資産形成に適した自社製の投資信託をそろえた。運営管理手数料が無料で、投信の保有残高に応じて『au WALLET ポイント』(以下、ポイント)がたまる仕組みもある」
「アプリは『スマホではじめる未来づくり』を基本コンセプトに利便性を高めた。イデコに加入していない人でも利用可能で、将来の積み立て額や節税効果のシミュレーションが試せる。イデコを申し込むと、アプリで加入手続きの進捗具合や運用状況の確認、資産配分の見直しなどができる」
■運用商品はバランス型4本
――商品ラインアップの特徴は。
「投資初心者の方でも迷わず決めやすいように、商品はバランス型の投信4本と定期預金の計5種類に厳選した。投信は『安定』『安定成長』『成長』『高成長』とリスクを4段階に区分し、シンプルで分かりやすいラインアップを意識した」
「1番人気は『安定成長』で、次に『高成長』が続く。基本的には複数の商品を組み合わせて保有する人が多い。具体的な数字は公表できないが、全体の掛け金に占める定期預金の比率は想定していたよりも低い印象だ」
「イデコで提供する投信はすべて弊社でつくり、運用している。投資信託の開発・運用から運営管理機関としての商品提供まで『垂直統合』でしているので、こだわりは強い。今後も新しい投信を設定し、ラインアップに加えることを検討している」
――商品を増やすと決めにくくなるのでは。
「たしかに商品の選択肢が増えると、投資初心者にとって悩みの種になり得る。ただ、投資教育に力をいれて、商品選びも楽しんでいただけるようにしていくことも弊社の果たすべき役目だと感じる」
■投信の保有残高に応じてポイント付与
――ポイント付与について詳しく教えてください。
「弊社の運用する投信を保有し、au(KDDI)のIDと連携させると残高に応じてポイントがたまる。IDはauの携帯回線の契約がなくても登録できるが、ポイントの付与率は半分になる。また、投信によってポイントの付与率は異なる。auと携帯回線の契約があって、最もポイントの付与率の高い投信100万円を1年間保有すると1000ポイント(1000円分)たまる計算だ」
――ポイントを付与する理由は。
「投資を身近に感じてほしいという狙いが大きい。決済するとポイントがつくクレジットカードのように、投資するとポイントがつくという体験を通して、投資が普段の消費活動の延長線上になればいいと考えている」
――ポイントを利用した他のサービスはありますか。
「今年4月から『au WALLET アプリ』内で、ポイントを使って投資を疑似体験できるポイント運用を始めた。イデコで提供する4本のバランス型投信のうち、最も値動きの大きい『高成長』に連動している」
■20代の資料請求が増加
――加入者の属性や傾向は。
「加入者は40代が中心で、男女比はちょうど半々くらい。老後資金問題が大きく取りあげられ、7月以降は若年層の資料請求が増えた。最も伸び率が大きかったのは20代だった」
「加入はイデコのアプリ経由が多い。対面チャネルでいうと、受付金融機関として協業している大和証券の店頭に弊社のイデコに関する資料を置いている。新たな顧客層との接点になるので、お互いに相乗効果が期待できる」
――今後の取り組みは。
「アプリやウェブ上でのコンテンツの拡充を進めている。イデコに加入してふるさと納税制度を利用した場合の節税シミュレーションは人気だ。生活に根ざした資産形成を目指すうえで、こういった様々な角度からの切り口は重要視している」
「投資教育にも力をいれる。イデコのアプリ内ではファイナンシャルプランナー(FP)が執筆するコラムのページビューが多く、資産形成に対する関心は高い。投資について学び、実践する機会を増やしていきたい」
「10月1日に保険代理業のFPパートナー(東京・文京)との合弁会社『auフィナンシャルパートナー株式会社』を設立した。来年1月からサービスを始める予定。当初は一部のauショップでマネープランなどの相談を無料で受け付ける。将来的に様々な金融商品を取り扱えるようにし、マネープラン作成から商品提案までワンストップでサービスを提供する」
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