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跳ねない豪ドル 失業率低下だが雇用統計いまいち、米中も重荷

日経QUICKニュース(NQN)=藤田心

外国為替市場でオーストラリア(豪)ドル相場の上値が重い。19日発表の11月の豪雇用統計(季節調整値)では失業率が改善した。発表を受けて豪ドルは買われたものの、すぐに失速。市場では「雇用統計の中身自体は良くない」との声が漏れる。経済面での関係が深い中国の景気に対する不透明感や、早期の利下げ観測が重荷となり、当面は上値余地が限られるとの予想が目立つ。

日本時間9時30分に発表された雇用統計は、失業率が5.2%と前月(5.3%)から小幅に改善した。新規雇用者数は前月比約4万人増と市場予想(1万4000人増)を大きく上回った。発表直後には豪ドル買いが強まり、対円相場は一時、1豪ドル=75円41銭と前日比34銭高の豪ドル高・円安水準を付けた。しかし早々と買いが鈍り、16時時点では75円35銭にとどまる。

「今回の雇用統計に対する市場の関心はいつも以上に高かった」と外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏は話す。豪準備銀行(中央銀行)が17日に公表した12月の理事会の議事要旨で「(次回の定例理事会が開かれる)2020年2月に経済見通しを再評価することが重要だ」との認識で政策メンバーが一致していたことが分かったためだ。議事要旨では、現状について「経済成長率や失業率はなお見通しとおおむね一致している」との説明もあった。だが市場関係者の間では、豪中銀が景気の下振れリスクに懸念を強めているとの見方が広がった。

雇用統計の発表直後こそ買われたものの、その後は上値が重くなった理由のひとつに、野村証券の宮入祐輔氏は「豪中銀の失業率の目標は4.5%とまだ距離があり、利下げサイクルを脱するとはいえない」点を挙げる。米連邦準備理事会(FRB)が20年を通じて政策金利を据え置くとの観測が広がるのとは対照的に、「国内消費が弱い豪州は利下げをやめられそうにない」(宮入氏)。他国との対比で、豪中銀の利下げに寛容な「ハト派」姿勢が際立つ可能性がある。

想定以上に増えた新規雇用者も、非正規雇用者数の増加(約3万6000人)が大きく寄与している。外為どっとコム総研の神田氏は「弱かった10月分の雇用者数がさらに下方修正されたのも気がかり。今回の雇用統計は利下げ観測を払拭するには至らない」と総括する。

長引く米中摩擦は豪ドルに影を落としている。両国は貿易交渉の第1段階で合意したものの「関税引き下げは一部にとどまり、引き続き中国経済の圧迫要因になる」(あおぞら銀行の諸我晃氏)構造は変わらない。中国経済の視界が開けない限りは積極的には豪ドルを買いにくいとの指摘は多い。米中が部分合意に達したとの報道を材料に、豪ドルは13日に一時75円96銭近辺と5カ月ぶりの高値を付けた。この水準が当面の上値として意識され「75円台後半では戻り売りが出やすい」(神田氏)。市場では「75円を割り込むと売りが膨らむ可能性もある」(セントラル短資FXの水町淳彦氏)と豪ドルの下落方向への動きを警戒する声が目立っている。

 

※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。


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