QUICK Market Eyes=池谷信久
新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、市場の先行き不透明感が強まっている。QUICKが3日に公表した1月の月次調査<債券>でも新型肺炎に対する注目度は高く、景気悪化を警戒する市場参加者のセンチメントが示される結果となった。しかし、株式相場に対しては楽観的な見方も多かった。
■「新型肺炎」が中心に座す
QUICK月次調査にはアンケートの集計数値のほかに、回答者のコメントが多数掲載されている。1月調査の回答者131名のコメントをテキストマイニングしたところ、新型肺炎に関する言葉が多くを占め、市場関係者の関心が集中していたことがわかる(図表1-1)。

(図表1-1)
すでに感染者、死者数はともに2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)を上回った。さらに感染が拡大する可能性もあり、世界景気に与える悪影響が懸念されている。
回答者からは「SARS流行時と比較すると、中国の経済規模が大きくなっており、世界の経済に与える影響が大きく、楽観はできない」(証券会社)、「旅行者の動きのみならず、物流や輸出入に影響が波及した場合、米中貿易摩擦に伴う追加関税同様かそれ以上の影響が出る可能性も否定できない」(信託銀行)などのコメントが寄せられている。
■景気に対する悪影響の懸念は根強い
アンケートの数値面からも景気への懸念がみてとれる。最も注目している債券価格変動要因を聞く質問では、「海外金利」が最多であることは19年12月調査と変わらないが、債券価格に与える影響を示す指数は43.5から53.4へ大きく上昇した(図表1-2)。相場上昇と下落の境目となる50を上回り、買い材料に転じことになる。新型肺炎は世界的な金利低下をもたらし、日本の長期金利にも低下圧力がかかるとみているようだ。「景気動向」も50を上回り金利低下要因になった。注目度は10%から24%に上昇しており、景気指標が相場に与える影響は大きくなりそうだ。

(図表1-2)
■株式相場への影響は軽微との見方も
ただ、債券市場関係者は新型肺炎が株式相場に与える影響をあまり悲観的にみてはいない。日経平均の下値メドを聞くと、最も多かった答えは2万2000円で、調査期間(1月28~30日)の最終日の終値から1000円弱の下落。米ダウ工業株30種平均は2万8000ドルと1000ドル弱の下落にとどまっている。米中摩擦への警戒感から株価が下落した19年秋には、それぞれ2万0500円前後、2万6000ドル前後で推移していたことを踏まえると、下値不安は大きくないとみられる(図表1-3)

(図表1-3)
■中国の市場対応は一定の安心感を与えている
足元の株式市場に安心感を与えているのは、震源地である中国が対策を打っていることだろう。中国人民銀行(中央銀行)は公開市場操作(オペ)で市場に大量の資金供給を行っている。また、3月上旬に開催される全国人民代表大会(全人代、国会に相当)に向けては、景気対策が打ち出されるとの思惑も市場には出ている。
ただ、根底にあるのは世界的に緩和的な金融政策が続くとの期待だ。最近の米国の株高の主な要因を二つ挙げてもらったところ、「金融緩和・カネ余り」との回答が83%と最も多く、次いで「米中通商交渉の第1段階合意」が39%、「景気回復期待」が34%と続いた(図表1-4)。

(図表1-4)
■適温相場の長期化がコンセンサスに
コメントには、「米連邦準備理事会(FRB)は、何か懸念事項があれば追加緩和をしてくるという暗黙の認識があり、それは昨年の保険的・予防的緩和で確認された感がある」(証券会社)など、株式相場が大きく崩れた場合の金融緩和期待が市場に浸透していることを指摘したものが多い。
実際、新型肺炎を受けたリスクオフ局面で、市場は20年末までに2回(0.50%)の利下げを織り込んだ(図表1-5)。緩和的な金融環境により株高と低金利が併存する「適温相場」が長期化することは、市場のコンセンサスになっているようだ。

(図表1-5)
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