NQNロンドン=椎名遥香
2月のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI、速報値)は市場予想に反して1月から改善したものの、楽観は禁物だ。構成項目の1つ「入荷遅延」によって押し上げられた面があるためだ。通常、入荷の遅れは需要に供給が追い付かない好況状態を意味するが、今回は新型肺炎の拡大で部品などの供給が滞っている影響が出た可能性がある。
■2月のユーロ圏製造業PMIは1年ぶり水準に改善
IHSマークイットが21日発表した2月のユーロ圏製造業PMIは49.1だった。好不況の境目である50は下回ったが、1年ぶりの高水準だった。市場予想(47.5)も上回った。製造業PMIは「新規受注」「生産」「雇用」「入荷遅延」「在庫」の5項目を基に算出する。2月はこのうち、相対的に安定した内需を背景に「生産」や「新規受注」の落ち込みが和らぎ、指数全体の上昇につながった面もある。
■「入荷遅延」は新型肺炎による供給の乱れのため?
だが、エコノミストが注目するのは「入荷遅延」の時間が長引いた点だ。一般的には部品などの供給が追いつかないのは需要の強さの裏返しと考えられるが、今回は「新型肺炎の拡大による供給の乱れが背景にある」(IHSマークイット)とみられる。むしろ「先行きの生産に悪影響を及ぼす可能性を示唆している」(コメルツ銀行のクリストファー・ウェイル・エコノミスト)というわけだ。
■サービス業にも影響の報告
サービス業のPMIは52.8と1月(52.5)から改善し、市場予想(52.2)も上回った。フランスで景況感の改善が目立ったが、ユーロ圏全体では旅行や観光業において肺炎の影響で営業活動が停滞したとの報告もあったという。IHSマークイットのエコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は「まだ影響が完全に表れていない可能性がある」と指摘し「新型肺炎の発生に伴い供給網や観光業がさらに混乱する可能性があることを踏まえると、景気見通しは極めて不透明だ」との見方を示した。
■ユーロ買いの持続性には疑問も
PMIが予想を上回ったのを手掛かりにユーロは21日、対ドルで前日比0.7%高の1.0863ドル近辺まで上昇する場面があった。ただ、感染拡大の収束が見えず、世界経済の下振れ懸念が根強いなかでユーロ買いの持続性は見込みにくい。目先は24日発表の2月のIfo企業景況感指数に関心が集まる。市場では95.3と1月(95.9)から小幅な悪化が見込まれている。